空き家をどう処分するかは、特に相続で受け継いだ場合、悩ましい問題です。実家が遠方にあり、なかなか管理に行けないと、維持費や固定資産税が負担になり、空き家の老朽化も進む一方です。
そんな中、「空き家を自治体に買い取ってもらえないか?」という疑問を持つ方も少なくありません。実は、自治体が空き家を買い取ったり、寄付を受け入れたりするケースはありますが、その条件は厳しく、簡単にはいきません。
本記事では、自治体に空き家を買い取ってもらう方法や、その他の処分手段について詳しく解説していきます。
この記事を読んで分かること ・自治体は空き家の買取や寄付を受け入れてくれるのか ・空き家対策に使える補助金制度について ・空き家を手放す様々な方法について |
自治体が空き家の買取や寄付を受け入れる条件は厳しい
多くの自治体では、予算の制約や法的な制限により、空き家の買取や寄付を受け入れるケースが限られています。特に老朽化が進んだ空き家や立地条件が悪い物件は、買取や寄付の対象から外れることが少なくありません。また、空き家の買取や寄付を受け入れることで、固定資産税などの税金を納めてもらえなくなることも受け入れを断る理由の一つです。
そのため、自治体に依頼をする前に自分の空き家が条件を満たしているかを確認する必要があります。もし条件を満たさない場合は、他の方法で空き家を処分する手段も検討しましょう。
自治体に空き家の買取や寄付を依頼する方法
自治体に空き家の買取や寄付を依頼する方法を以下のパターン別に解説していきます。
- 空き家の買取を依頼する場合
- 空き家の寄付を申し出る場合
前述の通り、自治体が空き家の買取や寄付を積極的に受け付けるケースは滅多にありませんが、申し込み自体は可能なのでまずはそれぞれの方法をしっかりと確認しましょう。
空き家の買取を依頼する場合
買取を依頼する際には、土地買取希望申請書を提出しなければなりません。この申請書には住所、氏名、土地の面積、土地・建物の用途、買取希望価格などを書き記します。買取希望価格は路線価をもとに妥当な金額を算出しましょう。
買取希望価格は以下のように算出できます。
例:空き家の土地面積が100㎡、路線価が20万円/㎡の場合
1:土地の路線価を確認する
例:このエリアの路線価は20万円/㎡。
2:土地の面積を確認する
例:空き家の土地面積は100㎡。
3:土地の評価額を計算する
計算式:路線価 × 土地面積
例:20万円/㎡ × 100㎡ = 2,000万円。
4:建物の評価額を求める
建物の経年による減価償却を考慮して評価額を算定します。
例:築30年の建物で、建物評価額が0円と仮定。
5:買取希望価格を設定する
土地の評価額と建物の評価額を考慮して買取希望価格を設定します。
例:土地評価額2,000万円 + 建物評価額0円 = 2,000万円が基準となります。
6:市場の需要や他の要素を考慮する
近隣の取引事例や市場の需要、空き家の状態なども買取希望価格の設定に影響します。
例:市場の需要や交渉次第で、1,800万円〜2,200万円の範囲で価格を調整。
買取には、現地調査や自治体の内部審査が必要なため、結果が出るまでには一定の時間がかかることも理解しておきましょう。また、買取価格については、相場より低くなる場合もあるため、あらかじめ他の買取業者の価格とも比較することをお勧めします。
空き家の寄付を申し出る場合
寄付は、自治体がその空き家をどのように活用できるかに大きく依存します。例えば、地域のコミュニティセンターや防災広場用地としての再利用が可能な場合は、寄付が受け入れられる可能性があります。寄付を申し出る際には、手続きの進め方や必要な書類について、事前に担当部署に相談するのが賢明です。
相続土地国庫帰属制度の要件を満たすのは難しい
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き渡すことができる制度ですが、要件を満たすのは容易ではありません。例えば、土地の状態や利用価値によっては、制度の適用を受けられない場合があります。
この制度を利用するためには、土地が過去に公的な使用目的で利用されていないことや、老朽化した建物が残っていないことなど、厳しい要件が課されています。
したがって、相続した空き家でこの制度を利用したいと考えても要件を満たすことは難しいでしょう。
空き家対策に利用できる自治体の助成制度5例
空き家を処分したり管理したりする際、自治体が提供する助成制度を活用することで、経済的負担を軽減することができます。以下では、空き家対策に利用できる5つの自治体の助成制度について詳しく説明します。
- 朽危険空家除却費用の助成制度|東京都杉並区
- 空き家解体融資利子補給補助金|愛知県春日井市
- 空き家家財道具処分支援事業補助金|北海道中川郡池田町
- 空家バンク成約奨励金|大阪府南河内郡河南町
- 老朽危険家屋除去後の土地に対する固定資産税の減免制度|福岡県豊前市
各自治体によって提供される制度は異なり、解体費用の補助や家財処分支援など多岐にわたります。これらの制度を活用することで経済的負担の解消を目指すことができます。
朽危険空家除却費用の助成制度|東京都杉並区
この助成制度は、東京都杉並区が提供するもので、老朽化して危険な空き家を解体する際にかかる費用の一部を補助するものです。
この制度を利用することで、空き家の解体費用を大幅に抑えることができ、結果として経済的な負担を軽減できます。手続きは杉並区の窓口またはオンラインで申請可能で、申請後には区の担当者による現地調査が行われます。具体的な助成額や条件については、事前に確認しておくことが大切です。
能登町空き家解体ローン利子補給補助金|石川県鳳珠郡能登町
石川県鳳珠郡能登町では、空き家を解体するための融資を受けた際、その利子を補助する制度があります。この制度を活用することで、融資にかかる利子負担を大幅に軽減することができます。
申請には、融資を受ける金融機関の書類が必要であり、能登町の指定する手続きに従って進めることが求められます。手続きの流れについても、事前に能登町のホームページで確認することをお勧めします。
空き家家財道具処分支援事業補助金|北海道中川郡池田町
北海道中川郡池田町では、空き家の家財道具を処分するための費用を補助する制度があります。家財道具の処分には通常、多額の費用がかかるため、この補助金を利用することで、実際の負担を大幅に抑えることが可能です。
申請手続きは、池田町の役場で行うことができ、必要な書類としては、家財道具の処分に関する見積書や領収書が必要です。
参考:池田町空き家家財道具処分支援事業
空家バンク成約奨励金|大阪府南河内郡河南町
大阪府南河内郡河南町の空家バンク成約奨励金は、空き家バンクに登録して成約した場合に支給される奨励金制度です。空き家バンクを利用して空き家を売却したり賃貸したりする際、この奨励金を受け取ることができます。
申請手続きは空き家バンクを通じて行われ、成約後に奨励金を申請する流れとなります。奨励金の具体的な金額や条件については、河南町の公式ウェブサイトで確認しましょう。
参考:空家バンク成約奨励金
老朽危険家屋除去後の土地に対する固定資産税の減免制度|福岡県豊前市
福岡県豊前市では、老朽化して危険な空き家を除去した後、土地に対する固定資産税の減免が受けられる制度があります。空き家を解体し更地にすると、固定資産税が3倍から4倍に上がってしまうというデメリットがありますが、空き家を除去した後も土地を保有し続ける場合、この制度は大きな経済的メリットをもたらします。
減免の手続きは豊前市の役場で行い、除去後の土地に関する書類を提出する必要があります。具体的な減免額については、事前に確認することをお勧めします。
参考:豊前市老朽危険家屋除去後の土地に対する固定資産税の減免について
自治体に買い取ってもらう以外で空き家を手放す方法
空き家を手放す方法は、自治体に買取を依頼するだけではありません。自治体が買取を受け付けない場合や、より早急に処分したい場合、他の方法も検討すべきです。以下では、代表的な4つの方法について解説します。
- 不動産買取業者に買い取ってもらう
- 空き家バンクに登録する
- 事業に活用する
- 無償譲渡する
これらの方法についても理解し、自分に合った最適な手放し方を選択することが重要です。
不動産買取業者に買い取ってもらう
不動産買取業者に空き家を買い取ってもらう方法は、手続きがスムーズで、迅速に現金化できるというメリットがあります。買取業者は、物件の状態にかかわらず買取を行うことが多いため、老朽化が進んだ空き家でも売却可能な場合が多いです。
ただし、買取価格は市場価格よりも低めに設定されることが一般的であるため、その点は注意が必要です。事前に複数の買取業者に見積もりを依頼し、最も納得のいく条件で契約することをお勧めします。
空き家バンクに登録する
空き家バンクに登録することで、空き家を必要とする人や企業に売却または賃貸することができます。空き家バンクは、自治体が運営するサービスで、地域内の空き家を再利用したいと考えている人々と所有者をつなぐプラットフォームです。
この方法は、不動産買取業者よりも高い価格で売却できる可能性がありますが、成約までの時間がかかることがあります。空き家バンクに登録する際は、物件の写真や詳細な情報を提供する必要があるため、事前に準備しておきましょう。
また、物件が地域のコミュニティにどのように貢献できるかをアピールすることで、売却・賃貸のチャンスが高まります。
事業に活用する
空き家を自らの事業に活用するという選択肢もあります。例えば、カフェや宿泊施設、ワークスペースなどにリノベーションし、収益を上げる方法です。
事業として活用するためには、初期投資が必要となりますが、長期的な収益を見込むことができます。また、地域のニーズに合った活用方法を選べば、自治体からの補助金を受け取ることも可能です。
無償譲渡する
空き家を無償で譲渡する方法もあります。この場合、譲渡先が修繕や維持管理の費用を負担することが多く、手続きが比較的簡単に進むことがメリットです。
ただし、無償であっても譲渡を希望する相手が見つかるまでには時間がかかることがあります。また、譲渡後のトラブルを避けるために、契約書をしっかり作成しておくことが重要です。譲渡に伴う法的手続きや、譲渡先がどのように物件を利用するかについても確認しておくと安心です。
まとめ
空き家を自治体に買い取ってもらう方法はもちろん、その他にも様々な選択肢があります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、自身の状況や希望に応じて最適な手段を選ぶことが重要です。自治体の助成制度を活用したり、不動産買取業者や空き家バンクを利用することで、空き家の処分がスムーズに進むことが期待できます。
また、事業としての活用や無償譲渡など、より柔軟な方法も検討する価値があります。自分の空き家がどの方法に適しているかをよく考え、適切な手続きを踏むことで、経済的な負担を軽減しながら、スムーズな処分を目指しましょう。
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