古家付きの土地を売却する際、最初に悩むのは「そのまま売却するべきか、解体してから売却するべきか」という人も多いと思います。それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあり、判断を誤ると、売却がスムーズに進まなかったり、予想以上のコストがかかることもあります。
この記事では、古家付き土地の売却方法について、さまざまなケースごとに適切な判断基準を紹介し、売却時に知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。
この記事を読んで分かること ・古家付き土地の売却方法の判断基準 ・売却時にかかる費用や税制の重要性 ・売却に向けたリスク管理と注意点 |
古家付き土地はそのまま売却がおすすめ
古家付きの土地を売却する際には、解体するか、そのまま売却するかという選択肢がありますが、多くのケースではそのまま売却することが推奨されます。そのまま売却することにより、解体費用が発生しないため、コストを大幅に削減できます。特に、解体費用が高額であり、利益を圧迫する場合には、建物を残したまま売却するのが賢明です。
また、建物の状態によっては、そのまま売却する方が買い手にとっても魅力的な選択肢となる場合があります。古家が良好な状態であれば、購入者はリノベーションを考えることができるため、古家付きの土地としての価値を最大限に活かすことができます。さらに、売却にかかる手続きや時間も、そのまま売却する方が短縮できることが多いため、迅速に売却を進めたい方にとっては大きなメリットとなります。
そのまま売却が推奨されるケース
そのまま売却が推奨される具体的なケースとしては、以下のような場合があります。
- 再建築が難しい
- 建物の状態が良い
- 解体費用でマイナスになってしまう
これらのケースに当てはまる場合は、そのまま売却する方が費用対効果が高く、売却の手続きもスムーズに進むことが期待できます。それでは、各ケースを詳しく見ていきましょう。
再建築が難しい
再建築が難しい土地では、そのまま売却することが推奨されます。例えば、法的制約や土地の形状、インフラの問題で新しい建物を建てることが難しい場合、解体しても再利用価値が低くなります。そのため、買い手も古家をそのまま利用することを前提に購入を検討するケースが増えます。
再建築が難しい理由としては、都市計画法や建築基準法による制限が挙げられます。特に古い住宅地では、新たな建物を建てるために必要な接道義務を満たしていないことがあります。このような場合、買い手は現状の建物を活用した方が効率的だと判断するため、そのまま売却する方が買い手にとってもメリットが大きいです。
建物の状態が良い
建物が比較的良好な状態にある場合、解体せずにそのまま売却する方が有利です。築年数が浅く、構造的にしっかりしている場合や、リノベーションで価値を高める余地がある場合、買い手にとっても魅力的です。
例えば、築30年未満の住宅であれば、基礎や構造がしっかりしている場合が多いため、リノベーションや一部改修だけで住むことができる可能性があります。これにより、買い手は新たに建物を建てるよりも低コストで済むため、建物の状態が良いことが売却時の大きな強みとなります。
解体費用でマイナスになってしまう
解体費用が売却益を圧迫してしまう場合は、そのまま売却する方が賢明です。特に、解体費用が数百万円に及ぶ場合、解体後に売却しても利益がほとんど残らないケースがあります。以下の表は、解体費用の一例です。
建物の種類 | 解体費用の目安 |
木造一戸建て(100㎡) | 200万~300万円 |
鉄筋コンクリート造(100㎡) | 400万~500万円 |
このように、建物の構造や規模によって解体費用が大きく変わりますが、特に鉄筋コンクリート造建築では500万円以上の解体費用がかかることがあります。このコストを考慮すると、そのまま売却する方がコストを抑え、結果的に高い収益を得る可能性が高いです。
解体して売却が推奨されるケース
古家付き土地はそのまま売却が推奨される一方で、以下のような場合には、解体して売却することをおすすめします。
- 老朽化が著しく倒壊の危険がある
- なるべく早く売却したい
解体することで、土地の価値を高め、より早く売却することが可能になります。それでは、各ケースを詳しく見ていきましょう。
老朽化が著しく倒壊の危険がある
建物が老朽化しており、倒壊の危険がある場合は、解体して売却する方が安全です。特に古家が木造の場合、築40年以上が経過していると、耐震基準が現在の基準を満たしていないことが多く、買い手にとって大きな不安要素となります。このような建物は早急に解体して土地だけを売却する方が、買い手が安心して購入しやすくなります。
また、倒壊の危険がある建物をそのままにしておくと、近隣住民への迷惑や法的な問題が発生する可能性もあります。このため、老朽化した建物がある場合は、解体してから売却することが最善策です。
なるべく早く売却したい
なるべく早く売却したい場合、解体して更地にする方が有利です。特に、古家がある場合はそのまま売却すると買い手の選択肢が狭まり、売却が長引くことがあります。更地にすることで、買い手が自由に再建築できるため、早期に買い手が見つかりやすくなります。
売却を急ぐ場合には、解体費用がかかることを考慮しても、土地だけを売る方が結果的に早く、かつ確実に売却できる可能性が高くなります。
古家付き土地をそのまま売却するメリット
そのまま古家付きの土地を売却することには、以下のようなメリットがあります。
- 固定資産税が安いまま売れる
- 居住すれば3,000万円特別控除を3年間受けられる
- 解体のコストがかからない
- 古家の契約不適合責任を免責にできる
これらのメリットを考慮することで、コストを抑えながら売却手続きを進められます。それでは、各メリットについて詳しく見ていきましょう。
固定資産税が安いまま売れる
古家が残っている場合、固定資産税が安いまま売却できることがあります。日本の税制では、古家が存在する土地の固定資産税は、住宅用地としての特例により、通常の税率よりも低く設定されています。そのため、土地だけを売却するよりも、古家を残したまま売却する方が税負担を軽減できます。
例えば、固定資産税が通常の税率で計算される土地と、住宅用地として特例が適用される場合の税額を比較してみましょう。
土地の評価額 | 通常の固定資産税額 | 住宅用地特例後の税額 |
2,000万円 | 40万円 | 10万円 |
このように、古家付き土地の特例を利用することで、年間の税負担が大幅に軽減される可能性があります。この税負担の軽減が、売却時に大きなメリットとなります。
居住すれば3,000万円特別控除を3年間受けられる
もし売却する前に古家に居住することができるのであれば、3,000万円の特別控除を受けることができます。この控除は、居住用財産を売却する際に適用されるもので、売却益から最大3,000万円が非課税となります。
例えば、売却益が4,000万円だった場合、通常であればこの全額に対して譲渡所得税が課されますが、3,000万円の控除を受けることで、課税対象は1,000万円に減少します。この結果、支払う税額も大幅に減少します。以下の表は、控除適用後と適用前の税額の比較です。
売却益 | 控除前の課税対象額 | 控除適用後の課税対象額 |
4,000万円 | 4,000万円 | 1,000万円 |
この控除を活用することで、大きな節税効果が期待でき、売却益を最大限確保できる可能性があります。
解体のコストがかからない
そのまま売却する最大のメリットの一つは、解体のコストがかからないことです。前述したように解体には数百万円の費用がかかり、特に鉄筋コンクリート造の建物の場合は、1,000万円以上にも上るケースもあります。解体せずに売却することで手元に残る利益を増やすことが可能です。
古家の契約不適合責任を免責にできる
古家付き土地の売却では、契約不適合責任(買い手が購入した物件に欠陥があった場合に売り手が負う責任)を免責できるケースがあります。特に、古い建物に関しては、売却時に「現状渡し」という形で、建物の状態に対して売り手が責任を負わないことが可能です。
この免責により、売却後に古家に関するトラブルを避けることができ、安心して売却手続きを進めることができます。契約書にしっかりと免責事項を記載することで、将来的なリスクを回避することができます。
古家付き土地をそのまま売却するデメリット
そのまま古家付きの土地を売却する場合には、以下のようなデメリットも存在します。
- なかなか買い手がつかない場合が多い
- 売却価格が相場よりも低いことが多い
これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、より良い売却戦略を立てることができます。それでは、各デメリットについて詳しく見ていきましょう。
なかなか買い手がつかない場合が多い
古家付き土地は、そのまま売却すると買い手が見つかりにくいことが多いです。特に、古家がかなり老朽化している場合や、購入者が新築を建てるために解体を検討する場合、古家の存在がマイナス要因になることがあります。買い手が古家を解体しなければならないと感じると、手間とコストがかかるため、敬遠されがちです。
このリスクを軽減するためには、物件のアピールポイントを強調し、買い手にとっての魅力を引き出すことが重要です。例えば、古家がリノベーションに適している場合や、土地の立地が良い場合には、その点を前面に押し出して売却活動を行うことで、買い手の関心を引くことができます。
売却価格が相場よりも低いことが多い
古家付きの土地は、そのまま売却する場合、売却価格が相場よりも低くなることがよくあります。これは、古家の解体費用や修繕費用を買い手が考慮するためです。買い手が将来的に追加で費用をかける必要があると判断すると、土地の価格が相場よりも低くなります。
以下の表は、首都圏での築30年以上の古家付き土地の売却価格と、更地での売却価格の比較です。
状態 | 土地面積 | 売却価格 |
古家付き | 175㎡ | 2,572万円 |
更地 | 175㎡ | 6,679万円(2024年10月現在) |
参考:首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況、首都圏の地価公示・推移・坪単価|2024年[令和6年]
このように、古家付き土地は更地に比べて売却価格が低くなることが多いですが、コスト削減や特例を利用することで、最終的な利益を最大化することが可能です。
古家付き土地を売却する際にかかる費用
古家付き土地を売却する際には、売却価格だけでなく、諸費用がかかることを理解しておくことが重要です。これらの費用を事前に把握しておくことで、最終的な手元に残る金額を見積もりやすくなります。以下では、売却にかかる代表的な費用について説明します。
- 仲介手数料
- 登記関連費用
- 印紙税
- 譲渡所得税
これらの費用のうち、仲介手数料や登記関連費用は売却の際に必ず発生するものです。それでは、各費用について詳しく見ていきましょう。
仲介手数料
不動産を売却する際に、不動産会社に支払う仲介手数料は重要なコストの一つです。仲介手数料の上限額は、物件の売却価格に応じて決まっており、通常、以下の計算式が用いられます。
仲介手数料=売却価格×3%+6万円+消費税仲介手数料
例えば、売却価格が2,000万円の場合、仲介手数料は以下のようになります。
売却価格 | 手数料(税別) | 消費税(10%) | 合計手数料 |
2,000万円 | 66万円 | 6.6万円 | 72.6万円 |
このように、仲介手数料は売却価格に応じて大きく変わるため、売却後に支払うコストとしてあらかじめ考慮しておく必要があります。
登記関連費用
売却に伴って、登記にかかる費用も発生します。特に、土地や建物の所有権を移転するための「登記手続き」にかかる費用や、場合によっては抵当権の抹消登記にかかる費用が必要です。登記費用の計算は、土地の評価額や依頼する司法書士の報酬によって異なりますが、一般的には以下の項目が含まれます。
- 所有権移転登記費用
- 抵当権抹消登記費用
- 司法書士の報酬
例えば、土地の評価額が1,500万円の場合、所有権移転登記にかかる登録免許税は以下の計算式で求められます。
所有権移転登記費用=土地評価額×0.15%所有権移転登記費用
この場合、1,500万円 × 0.15% = 22,500円となります。これに加えて、司法書士への報酬が数万円発生します。
印紙税
売却契約書には印紙税が課されます。この印紙税は、売却価格に応じて以下の表のように変動し、例えば売却価格が1,000万円から5,000万円の間であれば、印紙税は1万円です。
売却価格 | 印紙税額 |
1,000万~5,000万円 | 1万円 |
5,000万~1億円 | 3万円 |
印紙税の金額は、契約書に貼り付ける収入印紙の購入費用として発生するため、こちらも売却コストとして計上しておきましょう。
譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税」がかかります。この税金は、売却価格から取得費や売却費用を差し引いた「譲渡所得」に基づいて計算されます。長期保有(5年以上)の場合、税率は20%(所得税15%+住民税5%)です。
例えば、売却価格が3,000万円で取得費が1,500万円、さらに諸費用が200万円かかった場合の譲渡所得は以下のように計算されます。
譲渡所得=売却価格−取得費−諸費用=3,000万円−1,500万円−200万円=1,300万円
この譲渡所得に税率20%をかけると、譲渡所得税は260万円となります。このように譲渡所得税が高額になることがあるため、売却時には税金の計算も重要な要素となります。
古家付き土地売却の注意点
古家付き土地を売却する際には、いくつかの注意点があります。これらを事前に把握しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな売却を実現することが可能です。主な注意点として、以下の3つが挙げられます。
- 免責事項を必ず確認する
- ゴミや家財道具は処分・撤去しておく
- 土地の権利や境界線を明確にしておく
それでは、各注意点について詳しく説明していきます。
免責事項を必ず確認する
売却契約書に記載される「免責事項」は、売却後のトラブルを防ぐために重要な項目です。特に、古家付き土地の売却では、建物の状態に対して売り手が責任を負わない「現状渡し」の免責が一般的です。この免責事項を正確に確認し、内容に不備がないかをしっかりと確認することが大切です。
「現状渡し」とは、建物の状態や設備に欠陥があっても、売り手がその責任を負わないことを意味します。買い手が物件を購入した後に発生する修繕や問題については、売り手に責任が及ばないため、売却後のトラブルを回避することができます。
ゴミや家財道具は処分・撤去しておく
古家付きの土地を売却する際には、建物内に残っているゴミや家財道具を事前に処分しておく必要があります。買い手にとって、不要なものが残っている状態では、物件の魅力が半減する可能性があるため、売却前に建物内を清掃し、すべての不用品を撤去することが推奨されます。
特に、遠方に住んでいる場合や物件が長期間放置されている場合は、専門の業者に依頼して大規模な片付けを行うことも検討するべきです。こうした準備を行うことで、買い手に好印象を与え、売却をスムーズに進めることができます。
土地の権利や境界線を明確にしておく
土地の権利関係や境界線の確認も、売却前に必ず行うべき重要なポイントです。土地の境界が曖昧な場合、売却後に隣地所有者とのトラブルが発生する可能性があるため、売却前に正確な測量を行い、境界線を明確にしておく必要があります。
また、土地の権利関係についても、名義変更や抵当権の有無を確認し、売却時に問題がないかを調べておくことが重要です。これにより、買い手が安心して購入を進められる環境を整えることができます。
まとめ
古家付き土地の売却を検討する際は、解体の有無を含め、売却方法を慎重に検討することが重要です。そのまま売却することでコストを削減し、税制優遇を受けるチャンスがありますが、売却が長引くリスクもはらんでいます。解体して更地にすることで売却を加速させることもできますが、解体費用がかかります。各選択肢のメリットとデメリットを踏まえて、自分にとって最も有利な売却方法を見つけましょう。
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