築年数が古く、リフォームや解体のコストが高額になることが多い古民家は、一般的な住宅と比べて売却が難しいと言われています。しかし、適切な方法と情報を押さえておくことで、売却の成功率を上げることが可能です。
本記事では、古民家の売却相場や具体的な売却方法、注意点について詳しく解説します。また、売却が難しい理由や、費用面での不安を解消するためのヒントを紹介していきます。
この記事を読んで分かること ・古民家の売却相場や具体的な売却方法について ・古民家売却時にかかる費用や税金について ・ビジネス活用や無償譲渡といった売却以外の代替案について |
古民家の売却相場
古民家の売却相場は、地域や古民家の状態によって大きく異なります。一般的には、都市部にある古民家の方が高値で取引されやすく、地方の古民家は売却が難しい場合があります。また、古民家の状態、特に築年数や耐震性能、リフォームの有無なども価格に影響します。売却価格の相場は、現地の不動産業者に相談することが最も確実ですが、オンラインでの査定サービスを利用することも可能です。首都圏と関東3県の中古戸建住宅の築年帯別の取引価格相場を以下に示します。
築16~20年 | 築21~25年 | 築26~30年 | 築30年~ | |
首都圏 | 4,429万円 | 4,232万円 | 3,421万円 | 2,572万円 |
埼玉県 | 3,009万円 | 2,644万円 | 2,001万円 | 1,439万円 |
千葉県 | 3,018万円 | 2,591万円 | 2,200万円 | 1,451万円 |
神奈川県 | 4,098万円 | 3,932万円 | 4,140万円 | 3,328万円 |
参考:首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2024年04~06月】
上記の表のように、地域や古民家の状況に応じて価格が大きく変動します。所有する空き家のあるエリアの詳細なデータは、不動産情報ライブラリで調べることができますので、ぜひ参考にしてください。
古民家を売却する6つの方法
古民家の売却にはいくつかの方法がありますが、ここでは6つの売却方法について詳しく解説します。
- そのまま売却する
- 解体して売却する
- リフォーム工事をして売却する
- 瑕疵担保保険を付帯して売却する
- 不動産業者に買い取ってもらう
- 空き家バンクに登録する
それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、売却方法を決定する際の参考にしてください。
そのまま売却する
古民家をそのままの状態で売却する方法は、最も手間が少なく、初期投資も少なく済む点が大きなメリットです。しかし、築年数が古く、耐震補強がされていない場合やリフォームが必要な場合は、買い手が見つかりにくく、売却価格が下がる可能性があります。市場に出される古民家の多くは、リフォームを前提に販売されるため、そのままで売却する場合は売却までの期間が長引くことも考慮する必要があります。あまり時間をかけたくない場合には適しているものの、売却価格に妥協せざるを得ない可能性が高いです。
解体して売却する
古民家を解体して土地のみを売却する方法は、特に建物の状態が非常に悪い場合に有効です。この方法では、解体費用が発生しますが、土地として売却することで買い手がつきやすくなる点がメリットです。解体費用は地域や建物の大きさにより異なりますが、目安として100万円〜300万円程度が必要です。土地のみとして売却することで、より広い層の買い手にアプローチできる可能性が高まり、ペルソナにとってもリスクを減らし、早期売却の見込みが立つ方法です。
リフォーム工事をして売却する
リフォーム工事を行うことで、古民家の価値を大きく引き上げることができます。ペルソナのように慎重な方にとって、リフォームのコストとその後の売却価格の増加見込みを比較することが重要です。リフォーム後の価格は、通常、リフォーム費用の1.5〜2倍程度の増加が見込まれますが、リフォームにかかる期間や労力も考慮する必要があります。
一般的に、戸建て住宅の水回り(キッチン・浴室・トイレ・洗面所)のみリフォームした場合でも150~250万円の費用がかかります。費用をかけてでも、より高い売却価格を期待できる選択肢となりますが、古民家の市場においてはリフォーム済み物件が多いため、競争も厳しいことを頭に入れておきましょう。
瑕疵担保保険を付帯して売却する
瑕疵担保保険を付帯することで、売却の成功率を高めることができます。一般的な瑕疵担保保険の保険料は数万円〜十数万円程度で、売却後の不具合に対する保証が付くため、買い手からの信頼を得ることができます。売却価格の引き上げや売却までの期間短縮が期待でき、投資する価値のある選択肢です。
不動産業者に買い取ってもらう
不動産業者による買取は、売却のスピードと確実性が最大のメリットです。売却を急ぐ場合には非常に有効な選択肢ですが、業者による買取は一般市場での売却よりも価格が低くなることが多い点がデメリットです。不動産業者との交渉次第ではありますが、業者買取を選択することで、最短で数週間以内に現金化できる可能性が高いです。
空き家バンクに登録する
空き家バンクを利用して古民家を売却する方法は、自治体やNPOを通じて購入希望者を探す手段です。この方法は、古民家の社会的価値を考えた買い手を見つけやすいという点で特に魅力的です。登録手続きは比較的簡単ですが、売却までの期間は長くなることがあります。特に、田舎の古民家では、買い手が現れるまで数カ月から1年以上かかることも少なくありません。時間がかかってもよい場合には、登録を検討する価値があります。
古民家の売却が難しい理由
古民家の売却には、さまざまな課題が伴います。ここでは、特に売却が難しくなる理由として以下の2点について解説します。
- 耐震性能が低いから
- 住宅ローンが通らない場合が多いから
古民家を所有している場合、これらの要因を事前に理解しておくことでより適切な売却戦略を立てることができます。
耐震性能が低いから
古民家の多くは、築年数が経過しており、現代の建築基準に照らすと耐震性能が不十分な場合が多いです。特に、1971年以前に建てられた物件は、耐震基準が改正される前の設計であることが多く、耐震補強が必須となることもあります。古民家を売却する際、購入者がこの点を非常に重視するため、耐震診断を実施し、必要に応じて耐震補強を検討することが、売却をスムーズに進める鍵となります。また、耐震補強を施す場合、費用は100万円〜300万円程度かかることがありますが、それによって売却価格が上昇する可能性もあります。安全性を優先する購入者に対しては、こうした対応が有効です。
住宅ローンが通らない場合が多いから
古民家の売却が難しいもう一つの理由として、住宅ローンが通りにくいことが挙げられます。古い物件や耐震性能が低い物件に対しては、金融機関が融資を渋る傾向にあります。特に、築年数が40年以上の物件に関しては、ローンが通りにくいことが多いため、購入者は現金での購入を余儀なくされるケースが少なくありません。慎重に売却を進めたい場合には、事前に金融機関との調整を行い、購入者に対しても資金調達のアドバイスを提供することが、スムーズな売却につながります。また、自治体や特定の金融機関で古民家向けのローンが用意されている場合もあるため、購入者にそのような選択肢を提示することも有効です。
古民家売却にかかる費用
古民家の売却には、いくつかのコストが発生しますが、ここでは古民家の売却に際して必要となる主な費用を3つ紹介します。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
事前にこれらの費用を把握し予算を立てることで、余計な出費を避けることができます。
仲介手数料
不動産売却の仲介手数料は、不動産会社が売主または買主から受け取る手数料で、日本では法律によりその上限が定められています。一般的に、不動産売却の仲介手数料は以下の計算式で算出されます。
仲介手数料の計算式:
- 売買価格が200万円以下の場合:売買価格 × 5.5% + 消費税
- 売買価格が200万円を超え400万円以下の場合:売買価格 × 4.4% + 消費税
- 売買価格が400万円を超える場合:売買価格 × 3.3% + 消費税
下記の表で、具体的な例を示します。
売買価格 | 計算式 | 手数料(税抜) | 消費税(10%) | 手数料(税込) |
200万円以下 | 売買価格 × 5.5% | 100万円 × 5.5% = 5.5万円 | 5,500円 | 60,500円 |
200万円超〜400万円以下 | 売買価格 × 4.4% + 2.2万円 | 300万円 × 4.4% + 2.2万円 = 16.4万円 | 16,400円 | 180,400円 |
400万円超 | 売買価格 × 3.3% + 6.6万円 | 1,000万円 × 3.3% + 6.6万円 = 39.6万円 | 39,600円 | 435,600円 |
5,000万円 | 売買価格 × 3.3% + 6.6万円 | 5,000万円 × 3.3% + 6.6万円 = 165.6万円 | 165,600円 | 1,821,600円 |
予算を細かく把握したい場合には、この手数料が最終的な売却利益にどの程度影響を与えるか、事前に計算しておくことが重要です。また、仲介手数料を安く抑えられる不動産業者を探すことも、費用削減の一つの方法です。
印紙税
印紙税は、売買契約書に貼付する印紙に対して課される税金です。印紙税の金額は契約金額に応じて決定され、例えば、1,000万円〜5,000万円の契約の場合、印紙税は1万円〜2万円程度です。売却を進める際にはこの費用も忘れずに計上しておく必要があります。印紙税は、売買契約の際に支払うため、売却が成立する段階での必要経費となりますが、これも事前に準備することで予期せぬ出費を防ぐことができます。
譲渡所得税
譲渡所得税は、古民家を売却して利益を得た場合に課される税金です。売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた額に対して課税されますが、長期譲渡所得(所有期間が5年以上)の場合、税率は15%とされており、住民税も合わせて負担が発生します。ただし、譲渡所得税の軽減措置として、3,000万円の特別控除が適用される場合があり、この制度を利用することで、税額を大幅に減らすことができる可能性があります。
古民家売却を成功させるポイント
古民家を売却する際、成功させるためにはいくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、特に注意すべきポイントを3つ解説します。
- 家財道具は全て撤去しておく
- 自治体の補助制度を調べる
- 解体やリフォームの費用と売買価格を比較し慎重に検討する
これらのポイントを把握し事前に準備を整えることで、売却をスムーズに進めることができます。
家財道具は全て撤去しておく
古民家を売却する際、家財道具が残っていると、購入希望者にとって物件の印象が悪くなることがあります。古い家具や雑貨がそのまま残っていると、購入者はそれらの撤去にかかる手間や費用を考えてしまい、購入の意欲が減退する可能性があります。撤去には費用がかかりますが、家財道具を全て撤去し、すっきりとした状態の物件を見せることで、購入者が古民家の広さや雰囲気をより感じやすくなり、売却までの期間が短縮されることが期待できます。
自治体の補助制度を調べる
自治体によっては、古民家の売却や維持に関する補助制度が設けられている場合があります。こうした制度を活用することで、売却にかかるコストを削減でき、利益を増やすことが可能です。しかし、自治体が提供する補助金は予算に限りがあるため、早めに情報を収集し、申請することが重要です。
解体やリフォームの費用と売買価格を比較し慎重に検討する
解体やリフォームには多額の費用がかかるため、その費用が最終的に売却価格にどのように影響するかを慎重に検討する必要があります。リフォームを行うことで売却価格が上がる可能性はありますが、その増加分がリフォーム費用を上回るかどうかのシミュレーションを行いましょう。また、解体して土地のみを売却する場合、古民家として売却する場合との価格差をしっかりと比較することが大切です。解体して更地になれば、固定資産税が3~4倍になる場合もありますので、解体を検討する際には専門家に相談し、シミュレーションを通じて最適な選択肢を見つけることが推奨されます。
どうしても売れない場合
古民家を売却する際、すべての手段を試してもなかなか売れないという状況も考えられます。ここでは、売却以外の選択肢として考えられるアイデアを2つ紹介します。
- ビジネスに活用する
- 無償で譲渡する
古民家が売却できない場合に備えて、他の活用方法を検討することも視野に入れましょう。
ビジネスに活用する
売却が難しい場合でも、古民家をビジネスとして活用するという選択肢もあります。例えば、古民家をリノベーションし民宿やゲストハウスとして運営することで、収益を得ることが可能です。
また、カフェやレストランとして活用することも一つの手段です。自然豊かな地域にある古民家は、都会の喧騒から離れてリラックスしたい人々に人気があるため、その立地を活かして飲食店として利用することができます。
このように、慎重に資金計画を立てつつ新たなビジネスの道を模索することで、古民家を有効に活用できる可能性があります。
無償で譲渡する
どうしても売却が難しい場合、周辺地権者や知人に無償で譲渡するという手段もあります。近隣の事業者が従業員や来客用の駐車場を探している場合や、隣地所有者が自分の土地を広げたいと考えている場合、無償譲渡に応じてくれる可能性があります。
また、不動産会社に譲る方法もあります。取り壊し費用よりも土地の価値が高い場合、不動産会社が古家付きで引き取った後、更地にして売却することがあります。無償であれば、譲り受けてくれる可能性がさらに高まります。
まとめ
古民家の売却には、相場や方法、コスト、そして売却が難しい理由など、さまざまな要素が絡んできます。慎重に売却を検討する方にとっては、これらの情報を理解し、適切に対応することが成功への鍵です。
売却が難しい場合でも、古民家をビジネスに活用したり、無償で譲渡することで、新たな価値を見出すことができるかもしれません。古民家の特性を活かしながら、最適な選択肢を見つけるために、専門家のアドバイスを活用しつつ、じっくりと計画を進めていくことが重要です。
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