賃貸物件で子供や大学生の騒音トラブルがある場合は強制退去が可能?アパートやマンションでの退去事例や条件を紹介

管理する集合住宅でのトラブルに困っていませんか? 

騒音トラブルの場合、騒音を出す入居者を強制退去させることは可能です。

本記事では騒音トラブルを解消したい、強制退去させたいと思っている方に向けて、騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させる流れや騒音トラブルが起きた際の注意点について紹介します。

騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させることは難しい?

騒音を理由に強制退去をさせる際には、内容証明郵便での勧告や建物明け渡し請求の訴訟提起などの工程が必要で手順が多いため、難しいと感じる方は多いでしょう。

① 賃貸借契約書に騒音に関する記載がある(騒音等の迷惑行為による契約解除の旨が記載)
② 入居者本人が騒音について認めている

こちらの二つの条件が当てはまる場合は強制退去をさせることができます。

また賃貸借契約書に①の記載がされていなくても、民法594条1項と民法616条に記載されている「用法遵守義務違反」の適用できるため、強制退去をさせることも可能です。

民法594条1項
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
民法616条
第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。
出典:e-Govポータル|民法

賃貸物件で騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させる流れ

ここで実際に強制退去させる際の流れについて紹介します。

大まかな流れは以下の通りです。

1.状況把握を行い、事実関係を確認する
2.張り紙などで入居者全員へ通知する
3.騒音主の入居者へ口頭や書面で勧告を行う
4.騒音主へ内容証明郵便による勧告を行う
5.契約解除を行う
6.建物明け渡し請求の訴訟を行う
7.強制退去を行う

それでは、それぞれの項目について詳しくみていきましょう。

1.状況把握を行い、事実関係を確認する

騒音が発生しているということが事実であることを確認するために、状況把握を行います。一人の入居者からの苦情のみで騒音が発生していると断定することは早計です。

まずは、他の入居者へのヒアリングを行います。

共用部での騒音であるとの相談がある場合は、共用部の防犯カメラで録画・録音し確認を行いましょう。

そのうえで騒音が発生しているという事実を把握します。

2.張り紙などで入居者全員へ通知する

騒音が発生していることを確認できたら、ポストへの封書投函や入居者全員が確認できる掲示板への張り紙で全入居者へその事実を周知します。

これは騒音主に改善を促す効果をもたらすほか、それまで我慢していた他の入居者の声を拾うことも期待できます。

3.騒音主の入居者へ口頭や書面で勧告を行う

ここまで集めてきた事実をもとに、騒音主へ口頭や書面で改善を求めましょう。

ただし、苦情を入れた入居人の情報(部屋番号など)は伝えてはいけません

騒音主が苦情を入れた入居人のことを逆恨みして、さらなるトラブルに発展する…なんておそれが考えられます。

そのため、あくまでも「周囲から騒音についての相談がある」という程度に留めて伝えましょう。

 4.騒音主へ内容証明郵便による勧告を行う

口頭や書面での注意喚起を行っても改善しない場合は、騒音に対する改善要求や上記に協力できない場合の具体的な契約解除日を記載した内容証明郵便を騒音主へ送付しましょう。

内容証明郵便は郵便局に郵便内容や発送日、受取日などが記録として残ります。

法律上、契約を解除する前に催促を行う必要がありますが内容証明郵便が催促の証明となるため後に裁判になった場合に重要な書類として機能します。

5.契約解除を行う

内容証明郵便に記載の期日までに、騒音主からの協力の意思表示がないといった状況の改善がないと判断できる場合、正式に賃貸契約解除の法的効果が生じます。  

引っ越し代金・原状回復費用は借主の負担です。すでに賃貸借契約書や重要事項説明書などへの記載があったとしても、言った・言わない問題を避けるために再度書面でお知らせしても良いでしょう。

6.建物明け渡し請求の訴訟を行う

賃貸契約の解除となった後、裁判所に対して建物明け渡し請求の訴訟提起を行います。

訴訟の提起に必要な書類は、以下の6点です。

・訴状
・証拠書類(賃貸借契約書、内容証明郵便など)
・不動産登記簿謄本
・固定資産評価額
・代表者事項証明書(原告又は被告が法人の場合)
・予納郵便切手(約6,000円)
・収入印紙
建物の所在地にある地方裁判所に書類を提出すると裁判が開始され、賃貸人の主張が認められれば賃借人に対して建物の明け渡しを命じる判決が出されて強制退去が可能になります。

7.強制退去を行う

建物明け渡し請求訴訟の判決により入居者の強制退去が認められると、裁判所の執行官によって荷物等の強制運び出しとなり強制退去を行うことができます。

強制退去時は下記を騒音主へ請求することが可能です。

・内容証明書費用
・裁判費用
・弁護士費用
・強制退去執行費用
建物が明け渡された後、賃貸人は賃借人が残した物品の処分や未払い賃料の回収手続きを進めます。これには、追加の法的手続きが必要な場合があるので雇っている弁護士に相談しましょう。

アパートやマンションで騒音トラブルが起きた際の注意点

アパートやマンションで騒音トラブルが起きた場合は、入居者が退去してしまう可能性があることを前提に騒音の事実確認をする、無理矢理追い出そうとしないといったことを注意する必要があります。

ここでは騒音トラブルが起きた際の3つの注意点を紹介します。

騒音の事実確認と程度を把握する

「騒音が発生している」という相談を受けたら、まずは先述のように、他の入居者へのヒアリングや、共用部の防犯カメラで録画・録音し確認を行い、騒音が発生しているという事実確認を行いましょう。

その際、騒音のレベルによっては騒音となる基準を超えておらず、後々必要になるかもしれない退去の要求が難しくなってしまうかもしれないため、騒音の程度についての確認が必要です。

騒音のレベルによっては騒音となる基準を超えていないため、後々必要になるかもしれない退去の要求が難しくなってしまう可能性があります。

世界保健機関(WHO)がヨーロッパ地域向けに作成した「環境騒音ガイドライン」によると、睡眠障害等の健康に影響を及ぼす騒音レベルの基準となるデシベルの目安は、40db(デジベル)以上とされています。

各騒音の種類や目安については、以下の表を参照ください。

目安①(うるささ)目安②(身体/生活への影響)騒音値(db)騒音発生源と距離、大きさの目安
きわめてうるさい聴覚機能に異常をきたす120db・ジェットエンジン(飛行機)の近く
110db・自動車のクラクション(2m)
100db・電車が通るときのガード下・液圧プレス(1m)
うるさくて我慢できない90db・犬の鳴き声(5m)・騒々しい工場の中・カラオケ(店内中央)・ブルドーザー(5m)
80db・地下鉄の車内・電車の車内・ピアノ(1m)・布団たたき(1.5m)・麻雀牌をかき混ぜる音(1m)
うるさいかなりうるさい。かなり大きな声を出さないと会話ができない70db・騒々しい事務所の中・騒々しい街頭・セミの鳴き声(2m)・やかんの沸騰音(1m)
大きく聞こえ、うるさい。声を大きくすれば会話ができる60db・洗濯機(1m)・掃除機(1m)・テレビ(1m)・トイレの洗浄音・車のアイドリング(2m)・乗用車の車内
普通大きく聞こえる、通常の会話は可能50db・静かな事務所・家庭用クーラー(室外機)・換気扇(1m)
聞こえるが、会話には支障なし40db・市内の深夜・図書館・静かな住宅地の昼
静か非常に小さく聞こえる30db・郊外の深夜・ささやき声
ほとんど聞こえない20db・ささやき・木の葉のふれあう音

出典:日本騒音調査(ソーチョー)

無理矢理追い出そうとしないようにする

騒音トラブルが発生した際、特に無理矢理追い出そうとしないことが非常に重要です。

まず、賃借人には法律に基づいた居住の権利があるため、強制的に追い出そうとする行為は法律違反のリスクを伴います。正当な理由や裁判所の判断なしに賃借人を退去させることは不当な立ち退きと見なされ、賃借人の権利を侵害する可能性があります。

大家が騒音主の大学生の部屋のカギを勝手に変える住居侵入罪
大家が騒音主の大学生の部屋に居座る器物損壊・住居侵入罪
大家が騒音主の大学生の家財道具を処分する不退去罪

さらに強引に退去を求めると、賃借人との関係が悪化してトラブルが深刻化することが懸念されます。

賃貸物件全体の評判や信頼にも悪影響を与える可能性があるため、できるだけ慎重な対応が必要です。

適切に対処しなければ苦情を入れた入居者が退去してしまう可能性がある

相談をして以降いつまでも状況が好転せず騒音に悩まされ続けていると、騒音の苦情を入れた入居者自身がしびれを切らして退去を決断してしまうということが考えられます。

また退去までいかなくとも大家や管理会社への信頼が落ちていくことも想像に難くなく、遅かれ早かれ退去を決断してしまうかもしれません。

早急に対応しなければ問題のない入居者ばかりが退去してしまうため不動産経営面においても悪影響となると認識し、適切な対応を意識していきましょう。

子供や大学生の騒音トラブルで強制退去された例を紹介

ここでは子供や大学生の騒音トラブルで強制退去された実例を紹介します。

一人暮らしの息子(大学生)が恥ずかしい話、強制退去になりました。

夜中に友達と騒ぐ、、という事が度々あり、苦情がくること1年以上。
反省文も書かされ、強制退去もやむ終えない状況なのに、又友達を入れてしまい強制退去の通告を言い渡されました。
もともと3月に退去する予定だったため、仲介業者には「3月に退去します」と連絡したのですが、
その日の午後に通告の電話があり、
「今月中に退去してください。違約金は2か月分を1ヶ月にしてあげます」
と言われました。
遊んで騒いでいたわけでなく、ゼミの仲間と打ち合わせを?していた、、。
といいますが、人を泊めた事に間違いはなく、家の息子が悪いのですが、、
契約時の書類にも強制退去の時の違約金についての記載がなく例え1か月分でも納得できません。
3月に退去すると言った後にもかかわらずの、違約金はありえるのでしょうか?

引用:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1153438331

子供が夜もうるさいとの事で、強制退去させられそうです。

身内の事なのですが、夫婦2人+小さい子供2人で賃貸マンションに住んでいます。子供も寝るのが遅く、21時以降に起きている事もしばしばあるようです。その子供がうるさいとの事で、以前より足音がうるさい、なんてささいな事でも苦情は何回かあったようです。苦情を言った人か分かりませんが、自転車のタイヤが全てパンクさせられるというような嫌がらせも受けていると聞きました。

しかし今回、いきなり管理組合から、マンションを強制的に退去して頂くとの通知がきたようです。しかしその通知を見てみると、署名を行ったのはたった3人で、しかも内容が以下のようなものでした。

「夜21時以降起きているのは、騒音が発生している付近では貴方の部屋だけで、騒音の発生源は貴方達家族に間違いないから、強制退去して頂く。」

はっきり言って、たった3人の署名しかない管理組合名義の通知が、拘束力を持った効力があるとは到底思えません。しかも、一般家庭で21時までに就寝し、物音を全く立てない家庭があるのかは甚だ疑問です。

引用:https://question.realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/1431975474/

騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させる際のQ&A

ここでは騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させる際の3つの気になる疑問を紹介します。

大家は騒音に対して責任がありますか?

入居者同士での解決を促すのではなく、大家自身が責任をもってトラブルを丸く収める必要があります。

その理由としては、

・大家には使用収益させる義務があるため
・騒音問題を放置しておくと、他の住民が退去してしまう可能性があるため
・騒音による損害賠償を請求されることを否定できないため

こちらの三つが挙げられます。

なお、大家が賃貸物件の管理を管理会社に委託している場合、騒音に対する責任は不動産管理会社にあります。

いざという時のために、誰の責任となるのか、今のうちに確認しておくと良いかもしれません。

無理やり退去させる方法はありますか?

しかるべき方法や流れに沿って対応していくことで、騒音主の意思とは関係なく強制的に退去させることは可能です。

しかし、入居者全員へ通知や騒音主の入居者への勧告、建物明け渡し請求の訴訟提起などの様々な手続きを行う必要があります。

詳しくは、本稿の賃貸物件で騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させる流れをご参照ください。

隣人がうるさいときは誰に言うべきですか?

まずは大家や管理会社に相談することをおすすめします。

騒音についての相談をしたい入居者、相談を受けた大家や管理会社、どちらにおいても必要があれば専門知識を持つ弁護士へ相談しましょう。

とくに解決まで長引きそうな場合や、騒音主の対応が顕著ではない場合は、自身だけで考え込まず早めに専門家への相談しましょう。

騒音トラブルを起こす入居者を強制退去させるのは大変

環境省「令和4年度騒音規制法等施行状況調査の結果」によると、騒音に関する相談の件数は年間2万件を超えています。

このデータからも騒音トラブルの発生は稀なものでなく、誰しもが悩まされる可能性があることが考えられるでしょう。

実際に入居者からの騒音に関する相談を受けたら、状況把握を行い、事実関係を確認したうえで騒音主の入居者へ口頭や書面での勧告を行うといった対応をしていきましょう。

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