空き家を別荘として運用するのはおすすめしない!税金やメリットデメリットの観点から紹介

昨今、社会問題の一つとして取り上げられているのが空き家問題。以下は統計局による空き家率のデータですが、全体的に空き家の数は増える一方です。

引用元:総務省報道資料

そんななか、田舎の空き家を別荘として活用する事例が注目されています。趣味の場所、実家であることの安心感など、空き家の別荘利用に関してはさまざまなメリットが思い浮かびますが、税負担や維持管理などの問題もついて回るため、デメリットもきちんと考慮して検討すべきといえるでしょう。

本記事では、空き家と別荘の違いをはじめ、知っておくべき税負担や別荘利用のメリット・デメリットについてくわしく解説します。

空き家や別荘、セカンドハウスの違いとは?分類について紹介

全国的に増えている空き家ですが、別荘やセカンドハウスと呼ばれるような住居とは何が違うのか?それぞれの定義について曖昧になりがちです。

「そもそも空き家や別荘を分類する必要はないのでは?」と思われるかもしれませんが、税制優遇を受けたいならそれぞれの定義の違いを理解したうえで、自治体に申請する必要があります。

まずは、空き家・別荘・セカンドハウスそれぞれの定義や違いについて解説します。

空き家

国土交通省によると「1年以上誰も住んでいない状態」や「1年以上何も使われていない状態」の住居を空き家と定義しています。また空き家であると判断される具体的な基準についても、国が以下の通り定めています。

  • 住居として使用されているのか
  • 登記記録や住民票
  • 管理状況

たとえば賃貸や別荘、倉庫など、所有者が住んでいない住宅でも何らかの方法で使用されている状態であれば、空き家とは判断されません。人の出入りやライフラインの使用状況なども具体的な判断基準になるといいます。

また、不動産登記や住民票の内容で空き家かどうかが判断される場合があります。特に不動産登記は住宅(空き家)の所有権を管理する上で重要なものです。内容に不備があれば、自治体から空き家と認定されることがあるでしょう。

そして、住宅や土地の管理状況で空き家と認定されることもあります。空き家が管理されていなければ、倒壊リスクや景観を損なう問題が発生するため、厳しい目で調査している自治体も存在します。

空き家対策特別措置法により、空き家が「特別空き家」として勧告された場合は自治体から厳しい指導が入り、それに応じなければ固定資産税の増額や罰金の支払いを命じられることがあるので注意が必要です。

別荘

別荘は、日常的に使用する住宅以外に休養や避暑・避寒を目的として所有する家屋をいいます。

一方で、毎月1日以上住居として使用している場合は別荘ではなくセカンドハウスになります。たとえば、週末だけ家族と過ごすために所有している家屋があれば、それは別荘ではなくセカンドハウスです。

別荘とセカンドハウスが区分分けされている理由は、税制面によるもの。

別荘ではなくセカンドハウスであれば、税制上の軽減措置が受けられます。逆に、空き家を別荘化して年に数回だけ使用する場合は、税制上の優遇措置が受けられなくなるため、税負担が自宅と比べて6倍近くかかってしまいます。

セカンドハウス

セカンドハウスは、自宅とは別に居住目的で所有する家屋のことです。たとえば、通勤時間を短縮するために職場の近くに自宅とは別の家を保有し平日のみ利用する場合は、生活の拠点とみなされ、別荘ではなくセカンドハウスということになります。

先述の通り、セカンドハウスは税制優遇が受けられるメリットがあります。しかし、空き家が所在する自治体に申請をして認定を受けなくてはなりません。

空き家と別荘には税金がかかる

誰も住んでいない空き家や年に数回しか利用しない別荘でも、所有しているだけで税金がかかります。

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 不動産取得税
  • 非居住住宅利活用促進税(京都市のみ※2026年度より)
  • 均等割の住民税

ここで、空き家や別荘に発生する税金について紹介します。

固定資産税

不動産を所有している以上、居住の有無に関係なく固定資産税が発生します。税額は「課税標準額(固定資産税評価額)×1.4%(標準税率)」です。

ある程度管理されている空き家やセカンドハウスなら、「固定資産税等の住宅用地特例」という制度で固定資産税が軽減されることがあります。しかし、家屋を取り壊して更地にしたり、空き家が特定空き家に指定されたりすれば税額が増えるので注意が必要です。

そもそも「固定資産税等の住宅用地特例」は「住宅(建物)」に対して適用されるため、建物のない更地は税金の特例率がなくなり、結果的に固定資産税の総額が増えることになります。

また自治体に特定空き家として指定され、助言や指導を無視した場合は勧告処分となり、住宅用地の特例が解除されて固定資産税が6倍にもなります。

特定空き家として指定されないためにも、空き家の管理状況を改善する必要があるでしょう。

都市計画税

空き家が都市計画区域内にある場合、固定資産税とは別に都市計画税がかかります。税額は「課税評価額(固定資産税評価額)×最高0.3%(制限税率)」です。

都市計画税も、固定資産税と同様「住宅用地の特例」が適用されるほか、家屋を解体したり特定空き家に指定されたりすると特例措置の対象外となるので注意しなくてはなりません。

不動産取得税

贈与などにより不動産を取得した場合は、不動産取得税が発生します。これは有償・無償、登記の有無に関係なく課税されるものです。税額は「課税標準額(固定資産税評価額)×4%(標準税率)」で算出されます。

一方相続により取得した場合は課税されませんが、代わりに相続税が課税されます。

また住居目的の空き家やセカンドハウスを贈与された場合も、不動産取得税の軽減措置が受けられます。まずはセカンドハウスとしての認定を受ける必要があるため、各都道府県の税事務所に確認しましょう。

非居住住宅利活用促進税

2026年度、京都市で全国初の非居住住宅利活用促進税(通称:空き家税)が新設されます。課税対象は、京都市内の市街化区域内に所在する非居住住宅(空き家)です。

非居住住宅利活用促進税は「家屋価値割」と「立地床面積割」の2つがあり、それぞれの税額を計算し足し合わせたものが課税額となります。

今後、他の自治体で非居住住宅利活用促進税が導入される可能性もゼロではありません。利用目的のない空き家を所有している場合は、不動産活用や売却を検討する必要があるでしょう。

均等割の住民税

もしも空き家を別荘にした場合、均等割の住民税を負担しなくてはならなくなります。というのも、住民票がない市町村に別荘を所有した場合、その土地のライフラインを利用・維持することになるため、別荘の所有者に納税義務が発生するのです。

別荘にかかる1年間の住民税は、市民税+県民税で5,000円前後です。詳しくは各自治体のホームページで確認しましょう。

空き家を別荘にするメリットとデメリット

空き家のメリット・デメリットは以下の通りです。

【メリット】

  • 避暑地・避寒地として活用できる
  • 賃貸にすることで不動産収入が得られる
  • 災害時に避難場所として利用できる

【デメリット】

  • 修繕費用の負担
  • 維持費用の負担
  • 犯罪に利用される可能性がある

メリット

まずは空き家を別荘利用するメリットについて解説します。

避暑地として活用できる

避暑地や避寒地として、趣味の場所として、また休養の場所として自由に使えるのが別荘の魅力です。

郊外の空き家を別荘にした場合、非日常的な環境で過ごせるメリットがあります。

賃貸にすることで不動産収入が得られる

空き家を別荘化したうえで他の誰かに貸し出せば、家賃収入が得られます。

たとえば観光地に近い別荘なら、民泊物件としても活用できるので定期的な収益につながります。

災害時に避難場所として活用できる

大きな災害が続いていますが、もしも自宅が被災した場合は別荘を避難場所として活用できます。

あらかじめ避難場所が確保できているぶん、心理的な安心感も大きいです。

デメリット

次に、空き家を別荘利用するデメリットについて解説します。

修繕費用が掛かる

空き家を別荘化したとはいえ、人が常時住んでいない状態だと建物や設備の劣化も早くなるため、修繕費用の負担が大きくなります。別荘化した空き家を賃貸に出す場合、民宿として運営する場合などもリフォームが必要です。

老朽化している空き家こそ、余裕を持って修繕費を準備しましょう。

維持費用が掛かる

空き家を所有するだけでも、固定資産税や管理費などの支出が発生します。

【管理費の例】

固定資産税:一戸建ての場合、10万円〜12万円程度

火災保険料:1万円~6万円

電気・水道料金:年間1万円~20万円

空き家を別荘として利用する場合でも、年間50万円ほどの維持費用がかかります。維持費用を軽くするには、賃貸に出すなどの不動産活用がおすすめです。

犯罪に利用される可能性がある

人の出入りが少なく人目につきにくい空き家や別荘は、犯罪に利用される可能性があります。放火、違法薬物の栽培、不法占拠など挙げればきりがありません。

犯罪に利用されないためにも、特定空き家に指定されないよう定期的に管理する必要があるでしょう。

空き家や別荘は放置せず手放すのがおすすめ

空き家の別荘化はメリットよりもデメリットが大きいため、思い切って空き家を手放せばデメリットが回避できます。

空き家の別荘化、そのデメリットの多くは金銭的なリスクです。不動産運用のスキルがないまま賃貸経営しても損失が増えたり、税や維持管理費用の負担が大きくなったりと、所有者を苦しめる要因になります。

ここで、空き家を別荘化せずに手放す2つの方法をご紹介します。

売却する

仲介業者や買取業者に依頼し、空き家を売却することで現金化することができます。

スピーディに現金化するなら空き家を直接買い取ってくれる買取業者をおすすめしますが、売却価格が安くなるデメリットがあります(仲介で売却するよりも2〜4割ほど)

その反面、仲介会社は希望の売却価格に近い金額が狙えます。とはいえ、すぐに空き家が売れるとは限りません(売却の相談から3〜6ヶ月が一つの目安)

無償譲渡をする

シンプルに手放す方法として、無償譲渡もあります。

その名の通り空き家を無償で譲渡する方法ですが、譲渡される側には不動産取得税や登録免許税、贈与税、固定資産税が課せられます。

当人同士が無償譲渡していたとしても、実質タダで譲り渡すことができません。譲渡先をすぐに見つけることは困難といえるでしょう。

別荘や空き家に関するQ&A

最後に、別荘や空き家に関する質問をまとめてご紹介します。

別荘は空き家ですか?

別荘と空き家はイコールではありません。

空き家の定義は「1年以上誰も住んでいない状態」や「1年以上何も使われていない状態」なので、別荘として年に数回だけ使用する場合は税制上の優遇措置が受けられなくなります。

税制上の優遇措置を受けるなら、別荘ではなくセカンドハウスにする方法がおすすめです。

家を二軒持つと税金はどうなる?

二軒分の税金が発生します。

一方、どちらかの家がセカンドハウスとして認められれば税制上の優遇措置を受けることが可能です。別荘を所有するときよりも税金が抑えられるので、毎月1日以上利用して節税を目指しましょう。

空き家を放置すると資産価値は下がりますか?

空き家を放置すると劣化が進み、不動産としての資産価値が下がります。

放置することで特定空き家に指定されるリスクもあるので、放置せずに活用するか、処分しましょう。

空き家や別荘は資産価値が高いうちに手放すべき

空き家は日本全国で増え続けており、今や社会問題として取り上げられています。

別荘として自分自身が活用したり、賃貸運用したりすることもできますが、税負担が大きく多額の修繕費や維持費が必要です。

資金的な余裕がない、また不動産運用やビジネススキルを持ち合わせていないなら、資産価値が高いうちに空き家を手放すことをおすすめします。

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