空き家を放置すると罰則を受ける?法的なリスクや指導の流れ、対策方法など

空き家を所有している方の中には、「放置しているだけで罰則が科せられるのでは?」と不安を抱えている方も少なくありません。実家や親族から引き継いだ空き家を管理するのは、忙しい日々の中で大きな負担となりますが、空き家を放置し続けることで、実際に法的リスクや経済的な負担が増える可能性があります。

本記事では、空き家の放置がもたらす法的リスクをわかりやすく解説し、罰則を避けるために取るべき具体的な対策をご紹介します。

この記事を読んで分かること
・空き家を放置する法的リスク
・空家等対策特別措置法に基づく罰則までの流れ
・空き家を管理するための具体的な対策

空き家を放置してもすぐに罰則を受けるわけではない

空き家を放置すると、すぐに罰則が科せられるというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際にはそうではありません。まず、空き家が法的に問題視されるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。地方自治体は、放置された空き家の状況や周辺への影響を調査し、適切な手続きを経て対応を行います。このため、空き家がすぐに罰金や行政代執行の対象になるわけではないのです。

ただし、放置を続けることで次第にリスクが増加していくため、空き家を管理する際には、どのような条件下で罰則が発生するかを理解し、事前に対策を講じることが推奨されます。

空家等対策特別措置法について

空家等対策特別措置法は、放置された空き家が増加し、地域社会に悪影響を及ぼすことを防ぐために制定されました。この法律に基づいて、自治体は空き家の調査や特定空家の指定、そして適切な管理を行わない場合に行政代執行を行う権限を持っています。空家等対策特別措置法の目的は、放置された空き家が倒壊や火災のリスクを引き起こすことを未然に防ぎ、地域の安全と美観を保つことにあります。

この法律では、自治体が空き家を特定空家として指定し、必要に応じて勧告や指導、最終的には命令を下すことができるため、空き家を持つ所有者はこの法律に従い、適切な管理を行うことが求められます。

空家等対策特別措置法により罰金を科せられるまでの流れ

空家等対策特別措置法に基づき、罰金が科せられるまでの流れは、いくつかの段階に分かれています。以下で説明する各段階において、どのような対応を行うべきかを詳述します。

  1. 空き家の調査
  2. 特定空家に指定
  3. 助言
  4. 指導
  5. 勧告
  6. 命令

それぞれの段階において、どのような行動が求められるかを理解し、罰則を避けるための具体的なステップを確認しておきましょう。

空き家の調査

最初のステップとして、自治体が空き家の状況を調査します。この調査では、空き家が放置されている期間や、その状態が周辺の住環境に与える影響を確認します。例えば、建物の老朽化が進行している場合や、害虫の発生、ゴミの放置などが確認されると、特に問題視されることがあります。

調査の結果、問題があると判断された場合、次のステップに進むことになります。この段階では、まだ罰則は科せられませんが、空き家の管理状況について改善を求められる可能性が高いです。

特定空家に指定

空き家が問題視された場合、自治体はその空き家を「特定空家」に指定することができます。特定空家とは、以下のように地域社会に悪影響を与える恐れのある空き家を指します。

・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 

引用:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン)

特定空家に指定されると、オーナーにはその状態を改善するための具体的な行動が求められます。

特定空家に指定される基準としては、建物の老朽化や周囲の環境への影響などが挙げられます。指定された場合、放置を続けることで罰則や固定資産税の増加が発生するため、すぐに対応策を講じる必要があります。

助言

特定空家に指定された後、自治体から最初に行われるのが「助言」です。助言は、空き家の管理状況を改善するための初期的な提案であり、比較的穏やかな対応です。この段階では、所有者が自主的に改善策を講じることが期待されています。

助言の方法については、所有者が空き家の状態を把握していなかったり、相続していた事実を知らなかったりする可能性もあるため、必ずしも書面のみで通知されるわけではなく、対面や電話等で聴き取りが行われるケースもあります。

助言を受けたのち、正当な理由なく対策を講じなかった場合、次のステップである「指導」や「勧告」に進む可能性が高くなるため、助言を受けた段階で可能な限り早急に対応することが推奨されます。

指導

助言が無視された場合、自治体はより強制的な「指導」を行います。この指導は、空き家の管理状況を改善するための具体的な行動を口頭、または書面で所有者に求めるもので、従わない場合にはさらに厳しい措置が取られる可能性があります。

指導を受けた場合、所有者は指示に従って改善策を講じる必要があります。指導の内容は、建物の修繕やゴミの撤去、庭の整備などが含まれることが多く、これに従わないと次の段階である「勧告」に進む可能性があります。

勧告

勧告は、指導に従わなかった場合に行われる強制的な措置です。この段階になると、自治体はより具体的な改善策を書面で所有者に提示し、それに従わなければ固定資産税の増加や罰金のリスクが発生します。

勧告を受けた場合、従わなかった場合のリスクを考慮し、速やかに改善策を実行することが求められます。

勧告を無視した場合は固定資産税が6倍に

勧告を無視すると、固定資産税の優遇措置である住宅用地特例が適用されなくなります。この特例が適用されない場合、通常であれば固定資産税の計算基準として使われる固定資産税評価額が6分の1に軽減されるところが、軽減措置が失われることになります。その結果、土地にかかる固定資産税が最大で6倍にも増えるリスクが生じます。例えば、通常の固定資産税が年間10万円の場合、勧告を無視すると60万円に増額されることになります。これは、空き家を放置し続けることで地域社会に与える悪影響に対するペナルティとして課せられるものです。

固定資産税の増加は所有者にとって大きな経済的負担となるため、勧告を受けた段階で適切な対応を講じることが極めて重要です。放置を続けることで、このような重い罰則が課されることを理解し、早期に対応することが推奨されます。

命令

勧告に従わなかった場合、自治体はさらに厳しい「命令」を書面にて下すことができます。この命令は、法的に強制力を持っており、従わなかった場合には罰金が科せられる可能性があります。命令を受けた場合、所有者は指示された改善策を実行しなければなりません。

命令を受けても改善が見られない、または改善が不十分であったり期限内に完了しない場合、最終的には行政代執行に至ることがあります。この段階になると、所有者の自主的な対応はほとんど不可能になり、自治体が強制的に対応策を実施することになります。

命令に背いた場合は50万円の罰金と行政代執行

命令に従わなかった場合、所有者は最大で50万円の罰金を科せられ、さらに行政代執行が行われる可能性があります。行政代執行とは、自治体が強制的に空き家の改善策を実行することで、費用は全額所有者に請求されます。

行政代執行により、例えば空き家の解体や修繕が行われ、その費用が所有者に重くのしかかることになります。命令を無視することのリスクをしっかりと理解し、罰則や行政代執行を回避するために、指示された通りの対応を迅速に実施することが求められます。

行政代執行の取り組み事例

行政代執行の実施例を確認することで、どのような事態が発生するかを具体的にイメージすることができます。以下は、実際に行政代執行が行われた事例の一例です。

事例1:老朽化した空き家の解体

東京都葛飾区では、長期間放置された老朽化した空き家があり、近隣住民からの苦情が相次いでいました。空家等対策特別措置法に基づき、平成18年から10年近くにわたり自治体は所有者に助言と指導を行いましたが、所有者は改善策を取らなかったため、最終的に命令が下されました。しかし、所有者はこれにも応じず、平成28年の3月に自治体は行政代執行を決定しました。

その結果、空き家は強制的に解体され、その費用は所有者に請求されました。解体費用は約185万円に達し、所有者は罰金とともにこの金額を支払うこととなります。

参考:地方公共団体の空き家対策の取組事例1

事例2:空き家の修繕とゴミの撤去

東京都品川区の事例では、ゴミの集積により空き家の外壁に穴が開き、通学路側の壁が崩落しました。近隣住民から改善要望の署名が行われ、自治体が調査を実施しました。所有者に対して再三にわたる助言・指導が行われましたが、改善が見られなかったため、自治体は勧告を行い、最終的に命令に至りました。

それでも対応がなされなかったため、行政代執行として空き家の外壁や柱の修繕と、約25tものゴミの撤去が強制的に行われました。修繕費用や清掃費用が合計約420万円に上り、これも全額所有者に請求されました。

参考:地方公共団体の空き家対策の取組事例1

これらの事例から分かるように、行政代執行に至ると強制的に対応が行われ、費用が高額になる可能性があります。放置を続けると、こうしたリスクが現実のものとなるため、できるだけ早く空き家の適切な管理を行うことが重要です。

特定空家に指定される前にとるべき対策

特定空家に指定される前に、空き家の管理を適切に行うことが、罰則や高額な費用を回避するための最善策です。以下に、特定空家に指定されないように取るべき具体的な対策を紹介します。

  • こまめな清掃と換気
  • 水回りのチェックとメンテナンス
  • 草取りや樹木の剪定
  • 賃貸や売却も検討する

これらの対策を実行することで、空き家が放置されていると見なされるリスクを大幅に減らすことができます。特に、清掃やメンテナンスを定期的に行うことで、空き家の劣化を防ぎ、地域住民とのトラブルを回避することができます。以下で各対策について詳しく説明します。

こまめな清掃と換気

空き家を長期間放置すると、埃や汚れがたまり、建物の内部が急速に劣化します。そのため、定期的に清掃と換気を行うことが大切です。例えば、月に一度の頻度で掃除をし、窓を開けて換気することで、空気の流れを確保し、湿気やカビの発生を防ぐことができます。

また、清掃の際には床や壁の状態をチェックし、必要に応じて修繕を行うことも有効です。これにより、空き家の維持が簡単になり、特定空家に指定されるリスクを大幅に低減させることができます。

水回りのチェックとメンテナンス

水回りは建物の中でも劣化しやすい部分です。特に、空き家の場合、水道管が凍結したり、長期間使用しないことによる配管の劣化が懸念されます。これを防ぐためには、定期的に水を流して水道の状態をチェックすることが重要です。

例えば、年に数回は水を流し、配管に異常がないか確認します。また、トイレや洗面台の水回り設備も点検し、必要があれば修繕を行うことで、将来的な大規模な修繕を避けることができます。これにより、空き家の価値を維持し、罰則のリスクを減らすことができます。

草取りや樹木の剪定

庭や外部の樹木も放置すると、雑草や木の枝が周囲に迷惑をかけることがあります。定期的な草取りや樹木の剪定を行うことで、見た目を整え、空き家が放置されていると見なされるリスクを減らすことができます。

例えば、季節ごとに庭の草刈りを行ったり、樹木が成長しすぎている場合は剪定するなどの対策を講じると良いでしょう。これにより、空き家が周囲に与える影響を最小限に抑え、罰則や苦情を避けることができます。

賃貸や売却も検討する

空き家の管理が困難な場合、賃貸や売却も有効な選択肢です。空き家を賃貸に出すことで、定期的に物件が使用され、自然な形で管理が行われるため、特定空家に指定されるリスクを回避できます。また、売却することで、固定資産税の負担を軽減し、将来的な管理コストを削減することもできます。

例えば、地域の不動産業者に相談し、空き家を賃貸物件として提供するための準備や、売却の手続きを進めることが有効です。賃貸や売却の選択肢を検討することで、空き家を持ち続けるリスクやコストを大幅に削減することができます。

まとめ

空き家を適切に管理しないと、特定空家に指定され、固定資産税の増加や罰金が科せられるリスクが高まります。この記事では、空き家の放置による法的リスクと、それを回避するための具体的な対応策を解説しました。清掃や換気などの日常的なケアを行うことや、賃貸や売却といった対策を検討することで、空き家のリスクを大幅に軽減できます。今すぐ実践できる対策を取り入れ、安心して管理を進めましょう。

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