空き家倒壊による事故の責任の所在は?損害賠償やリスクへの対策方法をご紹介

空き家を放置すると、さまざまなリスクが発生します。特に、老朽化による倒壊は重大な事故を引き起こし、空き家の所有者に大きな法的責任が問われる可能性があります。また、倒壊による事故だけでなく、犯罪に悪用されたり、特定空き家に指定されることで税金や罰金が発生するなど、思わぬ負担が増えることもあります。

この記事では、空き家を放置することで生じる法的責任や損害賠償額の具体例を紹介し、空き家所有者が取るべき対策について詳しく解説します。

この記事を読んで分かること
・空き家の放置による法的リスク
・特定空き家に指定された場合のペナルティ
・空き家リスクを軽減するための具体的な対策

空き家倒壊による事故の責任は原則空き家の所有者が負う

空き家が倒壊し事故が発生した場合、その責任は基本的に空き家の所有者が負うことになります。日本の法律では、不動産所有者はその所有物が原因で他人に損害を与えた場合、適切な管理が行われていなければ責任を問われます。特に、空き家は人が住んでいないため、定期的な管理が行われにくく、建物の老朽化が進みやすいです。老朽化した家屋が倒壊すれば、隣接する家屋や通行人に甚大な被害を与える可能性があります。

所有者が責任を免れるためには、適切なメンテナンスを行い、倒壊を防ぐための予防策を講じていることを証明する必要があります。たとえば、定期的に専門業者に建物の点検を依頼し、その結果を記録しておくことが推奨されます。このような対応を行っていると、自然災害や不可抗力による倒壊の場合には、免責されることも考えられます。

空き家倒壊による事故の損害賠償額

空き家の倒壊に伴う事故が発生した場合、所有者はその損害に対する賠償を行わなければなりません。損害賠償額は、事故の規模や被害の内容に応じて異なります。ここでは、具体的な賠償額について、日本住宅総合センターが調査した空き家発生による外部不経済の損害額の試算結果から例を挙げながら説明します。

以下は、いくつかの代表的なケースです。

  • 倒壊により隣接家屋の家族3人が死亡した場合
  • 屋根や外壁の落下により通行中の児童が死亡した場合

まず、倒壊による死亡事故は、所有者にとって非常に大きな責任が生じるケースです。以下に、それぞれのケースに応じた損害賠償額の例を示します。

倒壊により隣接家屋の家族3人が死亡した場合

倒壊が隣接家屋に及び、その家族3人が死亡した場合、損害賠償額は極めて高額になることが予想されます。死亡事故の賠償額は、1人当たり約5000万円から1億円程度が相場とされています。これに加えて、家屋の修復・処分費用や遺族への精神的損害の補償などが加算されるため、総額で数億円に達する可能性があります。

下記は、仮に3人が死亡し、家屋の修復費用も発生した場合の損害賠償額の例です。

区分金額(円)
人身の損害賠償(3人)1億9,360万円
物件の損害賠償1,500万円
総額2億860万円

このように、死亡事故が発生すると、賠償額は非常に高額になります。このリスクを回避するためには、所有者が事前にしっかりとした管理を行い、建物の老朽化や倒壊の兆候を見逃さないことが重要です。

屋根や外壁の落下により通行中の児童が死亡した場合

次に、屋根や外壁の落下が原因で通行中の児童が死亡した場合について説明します。このケースでも、損害賠償額は高額になることが予想されます。以下に、損害賠償の内訳例を示します。

区分金額(円)
死亡逸失利益3,400万円
慰謝料2,100万円
葬儀費用130万円
総額5,630万円

万が一の事故を防ぐためにも、老朽化した建物の早期の修繕や解体を検討することが重要です。

倒壊以外に空き家を放置することで生じるリスク

空き家の倒壊以外にも、放置することでさまざまなリスクが生じます。ここでは、主なリスクについて具体的に説明します。

  • 犯罪に使われる可能性がある
  • 特定空き家に指定される
  • 勧告を無視した場合固定資産税は6倍になる
  • 命令に従わない場合50万円の罰金と行政代執行

これらのリスクに直面すると、経済的負担だけでなく、社会的な信用にも影響を与える可能性があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

犯罪に使われる可能性がある

空き家が犯罪の温床になるケースは少なくありません。放置された空き家は、無人であるため不法侵入者に狙われやすく、違法な活動の拠点として利用されることがあります。このような事態に発展すると、所有者にも間接的な責任が問われる可能性があるため、空き家の放置は避けるべきです。

特定空き家に指定される

特定空き家に指定されると、法的・経済的なリスクが一層高まります。特定空き家とは、以下のような状態にあると判断された空き家のことを指します。

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態 そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 

引用:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン)

これに指定されると、所有者に対して厳しい措置が取られることになります。具体的には、行政からの勧告や指導が行われ、それを無視した場合、さらなるペナルティが課される可能性があります。

勧告を無視した場合固定資産税は6倍になる

特定空家に指定され、さらに行政から勧告を受けると、固定資産税の優遇措置である住宅用地特例が適用されなくなります。これにより、通常は固定資産税評価額が6分の1に軽減される仕組みが無効となり、結果として土地に対する固定資産税が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。

以下に、勧告を無視した場合の固定資産税の増加例を示します。

項目通常の固定資産税勧告を無視した場合の固定資産税
固定資産税(年額)20万円120万円

このように、勧告を無視することで大きな経済的負担が生じるため、適切な対応を行い、空き家を特定空き家に指定されないようにすることが重要です。

命令に従わない場合50万円の罰金と行政代執行

行政からの命令に従わなかった場合、最大で50万円の罰金が科せられる可能性があります。また、罰金だけでなく行政代執行も行われることがあります。行政代執行とは、自治体が所有者に代わって空き家の撤去や修繕を行い、その費用を所有者に請求する制度です。これにより、さらに大きな経済的負担を強いられることになります。

例えば、撤去費用が100万円かかる場合、罰金50万円と合わせて150万円もの支払いが求められることになります。下記に、命令無視のペナルティの例を示します。

項目金額(円)
罰金50万円
行政代執行の撤去費用100万円
総額150万円

このように、空き家を放置して命令を無視することは、大きな経済的リスクを伴うため、早めに対応を行うことが不可欠です。

行政代執行の事例

国土交通省は地方公共団体等の空き家対策の取り組み事例をインターネットで公開しています。今回はその中から一件のケースをご紹介します。

平成30年、山口県周南市ではある空き家に対し行政代執行を実施しました。空き家が老朽化し外壁の崩落や屋根瓦の落下の危険があると判断され、所有者に対して再三にわたる改善要求が出されましたが、所有者が指導・勧告に従わなかったため、自治体が代わりに撤去を行い、その費用を所有者に請求した事例です。

この場合、撤去費用として約220万円が発生し、さらに所有者には50万円の罰金も科されました。結果として、合計約270万円の経済的負担を強いられることとなりました。

参考:地方公共団体の空き家対策の取組事例2

空き家倒壊のリスクを避けるための対策方法

空き家の倒壊やその他のリスクを回避するためには、日常的な管理が不可欠です。ここでは、リスクを最小限に抑えるために行うべき具体的な対策方法を説明します。

主な対策方法は以下の通りです。

  • こまめな掃除や換気をする
  • 草刈りや樹木の剪定をする
  • 害虫対策をする
  • 水回りの劣化をチェックする
  • 家の外の掃除や破損チェックをする
  • 近隣の住人とは積極的にコミュニケーションをとる

これらの対策を実行することで、空き家の状態を良好に保ち、倒壊リスクや犯罪リスクを回避することができます。それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。

こまめな掃除や換気をする

まず、空き家の内部を常に清潔に保つために、定期的な掃除や換気を行うことが重要です。長期間人が住んでいない家屋は、湿気がこもりやすく、カビや劣化が進行しやすい傾向にあります。こまめに換気をすることで、湿気を逃がし、建物の寿命を延ばすことができます。

また、定期的な掃除により、害虫や動物が住み着くリスクも減少します。特に、家の中に不用品を残さないことが、害虫対策としても効果的です。

草刈りや樹木の剪定をする

庭や周辺の手入れも重要な対策の一つです。草が伸び放題になっていると、視界が悪くなり、不審者が侵入しても気づかれにくくなる可能性があります。また、樹木が成長しすぎると、建物自体に影響を与えることもあります。例えば、枝が屋根に接触している場合、風などで枝が落ちることで屋根の破損を引き起こすことがあります。さらに、隣家の敷地まで枝が伸び落ち葉や毛虫の被害が生じると、近隣トラブルに発展するリスクもあります。

定期的に草刈りや剪定を行うことで、こうしたリスクを軽減できるため、季節ごとに行うことを推奨します。

害虫対策をする

空き家が長期間放置されると、害虫が住み着くリスクが高まります。特にシロアリやゴキブリ、ネズミなどの害虫が発生すると、建物の劣化が進み、倒壊のリスクがさらに増加します。害虫が家の柱や土台を食い荒らすことで、構造が弱くなり、倒壊の原因にもなりかねません。

効果的な害虫対策としては、まず定期的な駆除業者の点検を依頼することが挙げられます。また、家の周囲に不必要な木材やゴミを放置しないこと、庭の雑草や樹木の管理を行うことも重要です。さらに、害虫が発生しやすい夏場には特に注意が必要であり、こまめなチェックを推奨します。

水回りの劣化をチェックする

空き家での水回りの劣化は、目に見えない大きなリスクを生む可能性があります。特に、配管が古くなっている場合、漏水や水漏れによって家屋が湿気にさらされ、建物の基礎や壁が損傷することがあります。このような劣化は倒壊の原因になるため、定期的なチェックが必要です。

水回りの劣化をチェックする際には、蛇口やシャワーの水漏れ、排水の詰まり、湿気の有無を確認しましょう。水漏れが確認された場合は、早急に修繕を依頼することが大切です。また、定期的に水回りの配管を専門業者に点検してもらうことで、将来的な大きなトラブルを未然に防ぐことができます。

家の外の掃除や破損チェックをする

家屋の外部も、定期的なチェックが必要です。特に、屋根や外壁の破損は、倒壊のリスクを高める要因の一つです。強風や台風によって屋根の瓦がズレたり、外壁にヒビが入ったりすることで、徐々に建物全体の構造が弱くなります。破損が見つかった場合は、放置せずに早めに修繕することが求められます。

具体的には、屋根の瓦がズレていないか、外壁にヒビや欠けがないかをチェックするのがポイントです。また、外部に設置されている雨どいやベランダなども劣化しやすいため、定期的に清掃し、破損がないか確認しましょう。早期に対策を行うことで、将来的な修繕コストを抑えることができます。

近隣の住人とは積極的にコミュニケーションをとる

空き家の管理において、近隣住民との良好な関係を保つことも非常に重要です。近隣住民が空き家の異変に気づいた際に、所有者に知らせてくれることが期待できます。例えば、倒壊の兆候が見られたり、不審者が空き家に出入りしている場合など、所有者がすぐに対策を講じるための情報提供が行われる可能性があります。

このため、近隣住民とは定期的に連絡を取り合い、空き家の状況を共有するよう努めましょう。また、近隣住民に対して「異常があれば教えてほしい」と依頼しておくことで、空き家の管理がより効率的になります。近所との良好な関係が、空き家のリスク軽減に大きく貢献することは少なくありません。

まとめ

空き家の放置には、倒壊リスクや法的責任、犯罪への悪用、特定空き家に指定されるといったさまざまなリスクが伴います。これらのリスクを回避するためには、日々のメンテナンスや近隣住民とのコミュニケーションが欠かせません。事前に適切な対策を講じることで、空き家の維持費を抑えながらリスクを最小限に抑えることができます。空き家所有者として責任を果たし、安全で安心な管理を心がけましょう。

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