但し書き道路とは?許可申請の方法やメリット・デメリットについても解説

特別な許可を満たした「但し書き道路」ですが、どんな条件で許可を得て、どのようなメリットを持つのかしっかり理解できている人は少ないのではないでしょうか。

土地の有効活用を考える際、道路の法規制は重要な要素です。

特に「43条但し書き」に分類される特殊な道路への理解は不動産取引や建築計画におけるプロフェッショナルにとって必須です。

この記事では、そんな43条但し書き道路がどのようなものなのかや許可申請の方法、それに伴うメリット・デメリットを明確に解説します。

許可申請の過程をスムーズに進めるための知識を手に入れ、賢い土地活用の一歩を踏み出しましょう。

43条但し書き道路物件とはなにか

43条但し書き道路物件

43条但し書き道路物件とは、法律上では道路として未認定ながら、建築基準法第43条の但し書きに基づき、一定の条件下で建物の「敷地」として利用できる土地を指す用語です。

これは建築基準法第43条によって、道幅が4m以上あるものを建築基準法上では道路と定義しており、建物を建てる際には接道義務が発生します。

接道義務とは建築基準法第43条により建築物の敷地は道路に2メートル以上接していなければならないと法律で定められており、この要件を満たせない場合に但し書き道路の許可申請を行うことが必要になります。

このような物件は不動産市場では法的リスクがある一方で、価格が抑えられる傾向にあることから投資対象として注目されています。

そのため43条但し書きの扱いを理解することで土地活用の選択肢が広がると共に、市場での機会を捉えるための重要なポイントとなるのです。

道路法43条但し書き道路の要件とは?

下記を満たすことで、「道路法43条但し書き道路」となります。

  • 公共の用に供する道は、農道、林道、河川及び港湾管理道路等で公的機関が管理している道であること。
  • 該当する道の通行上の使用について、協議が終わっていること。
  • 該当する敷地内の雨水及び汚水等の排水処理ができること。 
  • 該当する道を建築基準法の道路と見なしたとき、建築基準法の規定を満たす建築物であること。

公的機関が管理しており、使用の協議が終わっている一方で、排水処理が可能など、多くの条件が設定されているため道路法43条但し書き道路の数は少ないです。

但し書き道路の許可申請について

手続きの流れは、申請前に所轄の行政機関で相談を行い、指導を受けた上で、道路法に基づく道路占用許可や建築基準法に基づく建築確認申請など、関連する各種申請を行います。

但し書き道路の許可申請について、その基本的な特徴から手続きの流れまで解説します。

但し書き道路とは、建築基準法上の道路であり、一定の要件を満たす必要があります。

許可申請は、土地利用計画に沿った形で行う必要があるため、自治体の指導を仰ぎながら正確な書類を提出することが重要です。

自治体によって必要書類が異なりますので本記事では参考として横浜市の必要書類の一部を記載させて頂きます。

  • 申請書
  • 位置図
  • 平面図
  • 設計図
  • 配置図
  • 全部事項証書(土地登記簿謄本)
  • 印鑑証明
  • 公図
  • 周辺現況図
  • 現場写真
  • 認定にかかる道の詳細図
  • その他

上記以外にも書類が必要になり場合によっては近隣住民の同意書が求められることもあります

許可申請のプロセスでは、申請に不備があると許可が下りないだけでなく、計画の遅延につながりかねないため、申請時に必要な書類がすべてそろっているか確認しましょう。

また、将来的な変更や、道路の使用に伴う条件など、法律や規制の理解を深めておくことも成功への鍵となります。

43条但し書きの許可基準

43条但し書きの許可基準は、安全かつ適切な交通の流れを確保するため、地方公共団体が設けています。

具体的には下記が規定されています。

  • 通行する車両や歩行者への安全確保
  • 周辺環境への影響
  • 交通量

許可申請を行う場合、これらの要件を満たしていることを証明する必要があり、時には交通影響評価などの詳細な調査結果を添付することも求められます。

43条但し書きにより、通常の使用を超えた道路使用が許可されるため、許可基準は厳格に適用されています。

許可申請の流れ

43条但し書き道路を利用するには、まず地元の役所で許可申請を行う必要があります。

許可申請の流れは下記のとおりです。

1.自治体に連絡をして道路の確認をしてもらう
2.必要書類の準備と提出
3.建築審査会(自治体)での審査
4.許可がおり、建て替えや建築可能

申請には、道路法に基づく各条文を遵守することを大前提に、適切に手続きを行うことで43条但し書き道路の合法的な使用が可能となります。

上記の特徴には、メリットもあればデメリットもあります。

ここでは43条但し書き道路について、メリット・デメリットそれぞれを紹介しましょう。

43条但し書き道路のメリット

まずは43条但し書き道路のメリットから紹介します。

主なメリットとして下記が挙げられます。

  • 土地利用の効率化
  • 都市再生計画
  • 地元経済への好影響
  • 既存集落の保全と環境への配慮
  • 防災機能の強化
  • 小規模開発の推進

それぞれについて詳しく解説していきましょう。

土地利用の効率化

本来であれば道路要件を満たさない狭小地や既存の狭い道路に面した土地でも建築が可能になることで、土地の有効活用が促進されます。

特に都市部のように土地の少ないエリアでは、限られた土地資源を最大限に活用することが求められるため、43条但し書き道路によって利用価値の低い土地の有効活用が可能です。

また、建築可能な土地が増えることで、新たな住宅供給が促進されることで住宅不足を緩和し、住民の住環境の改善が期待できるなど、より多くの人々が適切な住居を得る機会が増えます。

都市再生計画

老朽化した建物やインフラが多い地域では、再開発や建て替えが必要です。

43条但し書き道路を活用することで、こうした地域でも建築が進めやすくなり、都市再生が促進されることで、地域の安全性や快適性が向上します。

また、計画の柔軟性が高まる点も

43条但し書き道路は特定の地域や状況に応じて柔軟な対応が可能となり、都市の成長や変化に迅速に対応することができます。

これにより、新たなインフラ整備や開発プロジェクトを円滑に進めることが可能です。

地元経済への好影響

43条但し書き道路を活用することで、従来では建築が困難だった土地に対する需要が高まり、土地の価値が上昇する可能性があります。

建築の促進による地元の雇用創出や経済活動の拡大など、地域経済の活性化への寄与や、43条但し書き道路を整備することで、経済性のみならず、地域のインフラ改善など、地元経済への好影響が期待できます。

また、新たな道路整備や既存道路の拡幅、舗装などが行われることで地域全体の利便性や交通安全の向上もポイントです。

既存集落の保全と環境への配慮

歴史的背景を持つ地域や伝統的な集落では、古くからの狭い道路が多く存在します。

43条但し書き道路を活用することで、これらの地域での新たな建築が可能となり、地域コミュニティの維持や文化的景観の保全が図られます。

結果、地域の特色を守りつつ、新たな開発が可能です。

また、密集市街地や既存の集落内での開発を促進することで、無秩序な郊外開発を抑制し、自然環境の保全に寄与します。

既存のインフラや公共施設を活用することで、環境負荷の低減が図られます。

防災機能の強化

43条但し書き道路によって狭隘道路に面した建築物の建て替えが促進されることで、防災面での改善が期待されます。

道路が整備されることで、それまでは通行が難しかった緊急車両の通過が可能になる点や、耐震性・防火性能の高い家屋が増えることで、安全性が高まります。

小規模開発の推進

43条但し書き道路を利用することで、小規模な開発プロジェクトが実現しやすくなります。中小のデベロッパーや個人が参加しやすい開発が可能となり、大手デベロッパーのみが可能な街づくりとは異なる、様々な人が参加する活発な開発が期待できます。

43条但し書き道路のデメリット

43条但し書き道路物件

43条但し書き道路にはメリットがある一方で下記のデメリットもあります。

  • 安全性の懸念
  • 地域の景観や環境の悪化
  • インフラ整備の遅れ
  • 行政の負担増加
  • 住民間の摩擦
  • 開発の不均衡

それぞれについて、詳しく紹介していきましょう。

安全性の懸念

43条但し書き道路では狭い道路や不整備な道路に面した建築物の建設が許可されます。

メリット面で「整備されることで緊急車両の通行が容易になる」とお伝えしましたが、逆に緊急時の避難や救急車、消防車の通行が困難になり、災害時や緊急時の対応が遅れるリスクがあります。

この点は開発計画次第ではありますが、リスクをはらんでいる点はデメリットです。

地域の景観や環境の悪化

狭小地に建物が密集することで、地域の景観が損なわれる可能性や、緑地やオープンスペースの確保が難しくなることで地域の住環境が悪化する可能性もあります。

景観は実用性に関係ないと考えられがちですが、景観の悪さが住民のストレスとなっての治安の悪化や人気の低下で地価が下がるなど様々なデメリットを招く懸念があります。

インフラ整備の遅れ

43条但し書き道路に面した建築物が増加した場合、道路の整備や拡幅が追いつかないケースが考えられます。

結果、交通渋滞や歩行者の安全確保が難しくなるリスクが懸念されます。

特に狭い道や工事が難しい道の場合、整備・拡幅作業は時間がかかる傾向にあるため、場所によってはインフラ整備に大幅な遅れが生じるリスクも懸念事項です。

行政の負担増加

43条但し書き道路の許可は行政・自治体が個別に審査を行う必要があるため、行政の負担が増加します。

適切な審査が行われないリスクや許可プロセスの遅延、ひいては他の事業の遅延リスクもあります。

住民間の摩擦

43条但し書き道路は狭小地の建築が増える可能性がありますが、その場合住民間でのプライバシーの確保や日照権、風通しの確保などで摩擦が生じる可能性があります。

新規住人同士だけではなく、既存住人と新規住人の間でのトラブルリスクなど、住民間での摩擦リスクが高まる可能性がある点もデメリットです。

開発の不均衡

但し書き道路を利用した開発が進むことはメリット面もありますが、地域ごとの開発のバランスが崩れる可能性があります。

特定の地域に過度な開発が集中することで、他の地域との不均衡が生じるリスクはデメリットの一つです。

43条但し書き道路物件売却するには

43条但し書き道路物件

43条但し書き道路物件を売却するためには、43条但し書き道路物件である点を理解してもらうことが必要です。

売却するための具体的な手順として、隣地所有者に売却の意向を伝えます。

そこで、道路としての機能が不完全な状態であることを説明して利用に関する合意を得ることが重要です。

また、不動産買取業者にもアプローチして専門的な評価を受けることも重要です。

売却プロセスでは、隣地所有者の協力が得られるとメリットが増し、売却がスムーズに進むことが期待できますが、合意に至らない場合のデメリットも念頭に置く必要があります。

自らだけで判断したり話を進めるのではなく、専門的知識を持つ業者からアドバイスを得ることが、最適な売却方法を見つける鍵となります。

隣地所有者に購入してもらう

43条但し書き道路物件売却時に重要な選択肢の一つとして、隣地所有者に購入してもらうことが挙げられます。

隣地所有者がその土地を購入することで、隣地の不動産価値を向上させることができ、売り手にとっても販売先の選択肢・価格のいずれも増えるメリットがあります。

ただし隣地所有者への売却を検討する場合、まず隣地所有者との交渉を行い、売買契約を締結しなければなりません。

売却が成立した後には、所有権移転登記などの登記手続きを進めることで、正式な物件の移転が完了します。

そのため隣地ではあっても正式な売買契約手続きが必要です。

不動産買取業者に買取を依頼する

不動産買取業者への買取依頼は、43条但し書き道路に接する物件のスムーズな売却方法として有効です。

隣地の方に売却するのはあくまで相手が承諾した場合で不要であれば断られてしまいます。

また、通常の物件とは異なり、43条但し書き道路に面した物件はものや場所によっては、市場での売買が難しい場合もあります。

しかし不動産買取業者ならば、現状の道路状況を把握した上での迅速な買取が可能です。

売主は仲介手数料を節約し、素早い現金化を可能にするなど、販売に時間がかかりがちな43条但し書き道路物件の買取にとって大きなメリットとなります。

まとめ

43条但し書き道路は特定の条件下で建築可能な土地です。

許可申請には自治体との密接な連携が必要で、土地活用を拡大できるメリットがある一方で、手続きが煩雑な点がデメリットです。

不動産買取時には43条の但し書きの存在が評価を左右する可能性がある点に注意し、買取を行うかを検討しましょう。

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