既存不適格建築物と違反建築物の違いは?増築や建て替え、売買に関しても解説

「既存不適格建築物って何?」
「既存不適格建築物と違法建築物って何が違うの?」
「既存不適格建築物の増改築や建て替えには制限があるの?」

このように既存不適格建築物の存在や取り扱いに疑問を持つ人も少なくないのではないでしょうか。不適格、という言葉から違法建築物と勘違いされるケースもありますが、これらの建築物は法的にも別物であり、増築から売買まで異なる制約やリスクを抱えています。この記事では既存不適格建築物と違反建築物の識別や適切な扱い方、増改築や建て替えの際に注意したいポイント等をご紹介します。

既存不適格建築物と違反建築物について

既存不適格建築物と違反建築物は、その法的な位置付けに違いがあります。既存不適格建築物は改正前の建築基準法に適合しているものの、現行法では非適合となってしまった建物です。これに対して、違反建築物は建築時点で建築基準法に違反して建てられた建物を指します。共通点としては、どちらも現在の法規に適合していないという点です。

どちらの建築物においても、今後の増築、改修、建て替え、売買を考える際に不動産取引への影響を考慮しなくてはなりません。

ここで既存不適格建築物と違反建築物それぞれの特徴やポイントについて解説します。

既存不適格建築物の特徴と注意点

改正前に合法的に建てられた既存不適格建築物は、現行の法規に適合しなくなったものの、特別な許可を受けて存続が認められているのが大きな特徴です。具体的には下記のような内容で、建築後に適用不適格となったケースがあります。

  • 建築後に建ぺい率や容積率のルールが変更した
  • 建築後に高さ制限が変更した
  • 1981年(昭和56年)6月以降に耐震基準が変更した

既存不適格建築物になった原因の多くは、用途地域の指定や変更です。たとえば用途地域が指定されていない土地に戸建てを建築したものの、その土地が新たに「第一種低層住居専用地域」へ指定されることで、建築した戸建ては高さ基準が不適合ということになり、既存不適格建築物になります。

国内のすべての土地に用途地域が定められているわけではありませんが、用途地域が新たに指定される、また再開発で用途地域が変更されるケースも珍しくありません。また用途地域は高さ基準だけではなく、建物の容積率や建ぺい率にも制限があります。

とはいえ建築当時は法令に適合していることから、思わぬ形で既存不適格建築物になったとしても使用自体は合法的に認められているのがポイントです。

一方で既存不適格建築物には一定の利用制限があり、増築や改築には制限がつく場合が多い点に注意しなくてはなりません。

違法建築物の特徴と注意点

建築基準法などの関連法規を満たさずに建築された違反建築物は、具体的には次の特徴を持つ建築物を指します。

  • 確認申請の内容とは違う建築物
  • 許可を受けた用途と違う用途で使用されている
  • 敷地内での建ぺい率や容積率をオーバーしている
  • 耐火構造の規定違反や隣地への不当な越境 等

違法建築物は安全性や公共の福祉を脅かす可能性が高く、法的な制裁や是正命令(回収命令や強制撤去)の対象となり得るのが注意すべきポイントです。

既存不適格建築物の増築・改修・建て替えについて

既存不適格建築物の増築や改修には法律上の制約があり、一定の条件下でのみ許可されます。

増築の場合は、元の建物の容積や延べ床面積を超えない範囲で対応しなければなりません。耐震性など安全性の向上を目的とした改修では、建築基準法の一部が緩和されることがあります。くわしくは自治体の担当課へ確認することをおすすめします。

建て替えの場合は、新たに建築基準法に適合した建物に建て替えなければなりません。法規制を遵守する必要が出るぶん、既存不適格建築物の建て替えは新規建築と同様の手順を踏む必要があります。

ここで既存不適格物件の増築・改築・建て替えそれぞれのポイントや注意点についてよりくわしく解説します。

既存不適格建築物の増築

居住空間の拡大や用途の追加などを目的に既存不適格建築物を増築したい場合、法規制の範囲内で許可される範囲内の改修や改築が可能か、建築士や不動産会社による専門的なアドバイスを仰ぐことが重要です。

また計画段階で適切な申請手続きをし、建築基準法のガイドラインに従って増築を行う必要があります。増築が制限されたり手続きに手間がかかったりと、既存不適格物件の対応は体験ですが、法的遵守により安全性を確保する目的があることを理解しておきましょう。

既存不適格建築物の改修

既存不適格建築物の改修で重要なポイントは、安全性の確保と建築基準法への適合を目指すことです。リフォームをする際は法的要件や規定を満たし、耐震性等の安全性を高める措置が求められます。確認申請が必要と判断されるほどの大規模なリフォームは、建物すべてを現行法に適合させる必要があることも覚えておきたい注意点です。建物の価値を維持しつつ、安心して生活できる空間へ改修するよう努めましょう。

既存不適格建築物の建て替え

既存不適格建築物を建て替える際は、建て替え前の建物よりも高さや床面積が減少する可能性があります。理由は現行の耐震基準に適合させないといけないため、同じ建物を建て替えることができないからです。建て替えの際は建築許可の申請、既存建物の解体、新しい設計に基づく建築作業が行われます。法規制の変更や地域の条例にも留意し計画を進める必要があるので、自治体の担当者や建築士等の専門家に相談することをおすすめします。

既存不適格建築物の売却に関する注意点やポイント

既存不適格建造物の売却は可能ですが、次のような理由でスムーズに売却しづらいデメリットもあります。

  • 買主側が住宅ローンを利用しにくい
  • 築年数が古く建物も老朽化している
  • 増改築や建て替えに制限がある

既存不適格建造物は活用範囲が限定的であり、担保価値が低いため金融機関から融資を断られるケースも多いです。また接道義務を満たしていない等の理由で建て替えができないことも多く、築年数が古い建築物が多いことから、建物の老朽化で資産価値が下がります。増改築や建て替えの制限を踏まえても、買い手が見つかりにくく市場性が落ちるのです。

そして購入希望者に対して既存不適格建造物であることを告知する義務があること、そして相場価格での売却が難しいという点にも注意しましょう。

一方で既存不適格建造物すべての資産価値が低いわけではありません。例えば現行法で定められた容積率を超える建物や、現時点で建物が建てられない場所に合法的に建築されている建物には一定の価値があります。

既存不適格建造物の売却自体は難しくても、必ずしも不可能とは限りません。売却の際は、不動産仲介会社や買取業者のサービスを検討しましょう。

既存不適格建築物を高く売るなら、次の方法を検討するのもおすすめです。

  • 更地にして売却する
  • 実績のある不動産会社へ依頼する
  • 既存不適格の原因を解消する

更地にすれば純粋に土地・敷地だけの売却となるため、既存不適格の影響を受けることはありません。また既存不適格建築物は築年数の古い物件が多いことから、購入後に解体される可能性が高いです。あらかじめ解体して更地にしておくと売却しやすくなるでしょう。

また既存不適格建造物の売却は不動産会社や買取業者に依頼することとなりますが、買取業者に関しては安い金額で買い取られる可能性が高いです。売却を急いでいなければ、実績のある不動産会社に依頼して売却すると高く売れる可能性があります。ただし既存不適格建築物の売買はマイナス要因でもあるため、不動産会社によっては扱いの差がでることもあるでしょう。だからこそ、実績のある不動産会社に売却を依頼することが将来的にも安心と言えます。

そして既存不適格となる部分をあらかじめ解消することで、売却にとってのマイナス要因がなくなり、高く売れる可能性があります。ただし解消には高額な費用がかかる場合もあるため、改修にかかる費用を売却価格に上乗せできるかどうかのバランスを考慮する必要があるでしょう。

売却に不利な要因となる既存不適格建築物ですが、こうした対策で相場に近い金額で売却できる可能性があります。

Q&A

既存不適格建造物は法律に関わる問題も含まれるので、取り扱いに慎重になるのも無理はありません。

  • 既存不適格建造物にそのまま住むことはできるのか
  • 既存不適格建築物かどうかをどうやって調べるのか
  • 既存耐震不適格建築物との違いは何なのか

などさまざまな疑問が生まれることもあるでしょう。ここからは既存不適格建造物にまつわるよくある疑問・質問についてご紹介します。

既存不適格建築物はそのまま使えますか?

既存不適格建築物は現行の法律に完全に適合していないものの、法の施行前に建てられたため合法的に使用を認められています。ただし、大幅な増築や建て替えを行う際には、現行の法律に適合させる必要があります。

既存不適格建築物かどうか調べる方法は?

既存不適格建築物かどうかを判定する方法として、建築基準法に基づき該当建築物の建築時期や規制の変更履歴を調査することが挙げられます。具体的には、

  • 役所での過去の建築許可情報を確認する
  • 土地の用途地域が建築時と変わっていないかを調べる

などが必要です。また建築士等の専門家による住宅診断(インスペクション)を受けることも有効で、既存不適格事項として該当するかどうか正確に判定してもらうことができます。

建築物の既存不適格性をチェックするには、建築確認の申請書や登記簿謄本、建築物台帳などの公的書類の確認が必要です。これらの書類は地方自治体の建築指導課や法務局で取得できます。専門の不動産会社や建築士へ相談することも検討しましょう。

既存耐震不適格建築物とは何ですか?

既存耐震不適格建築物とは、新耐震基準が導入された後もその基準に適合していないにも関わらず、法的な猶予期間中に建てられた建物のことを指します。こうした建物は1981年以前に建築されたものが多く、現行の耐震基準に適合していないため、地震が起きた際の崩壊リスクが高いとされています。

既存耐震不適格建築物の所有者には改修義務があり、安全性を確保するためにも耐震改修工事による構造の強化が必要です。また既存耐震不適格建築物の売買や増築には特別な留意が求められ、耐震性の向上対策が強く推奨される状況でもあります。耐震補強の義務はありませんが、所有者の自発的な耐震改修工事が推奨されていることを知っておきましょう。

まとめ

既存不適格建築物は法改正前に合法的に建てられたものの、現行法には適合しない建築物のことを指し、建築当時から法律違反で建てられた違反建築物とは異なります。増築や改修には制限があり、建て替えや売買する際には法的な注意点を理解しておかなくてはなりません。特に売却の際は買い手がつきにくく、相場よりも低い価格設定になりがちなので、不動産会社等のサポートを受けることが大切です。一方で既存不適格建造物はデメリットばかりではありません。そのまま使用することも法律で認められていますし、現行法に適合した増改築や建て替えで活用し続けることも可能です。また既存耐震不適格建築物も既存不適格建造物と同様に違法建築物ではないため、耐震改修工事により建物の安全性を高めることができます。既存不適格建造物の取り扱いは慎重になりがちですが、不動産会社や建築士などの専門家の力を借りながら今後の活用について検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事

  1. 空き家法改正の内容やポイントについて解説

  2. 【2024年7月最新】なぜ売れない?空き家が売れない理由とは?放置するリスクと処分方法まで徹底解説

  3. 空き家の固定資産税が改正で6倍に上がるって本当?対象物件や対策法についても解説

  4. 固定資産税、マンションと戸建てではどう違うの?税金のかかり方と節税のコツ

  5. 実家を相続する流れとは?節税方法や兄弟間で相続する際のポイントについても解説

  6. 再建築不可物件の買取業者7選|納得できる価格で売却するコツを紹介

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CATEGORY

  1. 賃貸物件で子供や大学生の騒音トラブルがある場合は…

  2. 空き家は通報される?特定空家に指定される流れや認…

  3. 空き家を別荘として運用するのはおすすめしない!税…

  4. 空き家再生ビジネスとは?成功事例や活用できる補助…

  5. 空き家を売るためにはどうすればいい?手順やかかる…

  1. 登録されている記事はございません。
  1. 登録されている記事はございません。