空き家は通報される?特定空家に指定される流れや認定基準を紹介

不動産を相続したけど、住む予定がないから放置している……そんなケースも少なくないでしょう。

しかし今、空き家を放置することで「特定空き家」に指定されると、行政処分が下って固定資産税や都市計画税の負担が増えたり、強制撤去を求められたりとさまざまなデメリットがあります。

本記事では、空き家を放置した場合のデメリットや通報されないための対策について解説します。

空き家を放置すると通報される?こんな空き家は注意!

特定空き家に指定されるきっかけでもっとも多いのが、周辺住民からの通報です。

特定空き家に指定されれば「空家等対策特別措置法」に基づいて、空き家に対する立ち入り調査や強制撤去が行われる可能性があります。特定空き家に指定されるのは、所有者にとってデメリットでしかありません。

一方、どんな状態の空き家が特定空き家に指定されるのでしょうか。国土交通省では、特定空き家に指定する要素として以下の4つを示しています。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を残っている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

参考:「特定空き家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)|国土交通省

ではここで、特定空き家に指定される4つの要素とともに、どんな状態が通報されやすい空き家なのかを具体的に解説します。

放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる空き家

  • 建物が老朽化している
  • 柱が傾いている
  • 屋根や外壁が落下する恐れがある
  • 基礎部分に不同沈下が見られる

このような状態の空き家は、倒壊などのリスクが高く危険と判断されるため、特定空き家に指定される可能性が高いです。

人の出入りがない空き家はメンテナンス不足や換気不足の影響で建物の老朽化が進みやすくなるほか、建物の重さで地盤や建物が沈んでいる不同沈下状態になって倒壊リスクが非常に高くなります。

倒壊リスクのある空き家は周辺住民の身に危険が及ぶため、通報されやすくなるでしょう。

放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある空き家

  • ゴミの放置により悪臭が漂っている
  • 浄化槽の破損で汚物の流出や悪臭が発生している
  • 害虫や害獣が発生している
  • 石綿(アスベスト)が飛散している

このような状態の空き家は、周辺住民の日常生活に支障を及ぼすことから特定空き家に指定されやすくなります

なかでもアスベストは、吸引により重篤な病気につながる恐れがあり非常に危険です。また、浄化槽の破損は害虫や害獣の発生原因にもなります。

適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている空き家

  • 敷地内にゴミが溢れている
  • 窓ガラスが割れたままになっている
  • 屋根や外壁にある落書きを放置している
  • 庭の雑草が伸びたままになっている
  • 看板が破損している

このような状態の空き家は、街全体の景観を損なう原因となるため特定空き家に指定される可能性があります。また景観が損なわれるだけではなく、ほかの問題につながる恐れがあるので注意しなくてはなりません。

たとえば窓ガラス割れを放置すると、不法投棄を誘発するおそれがあります。また看板が破損していると、景観が損なわれるだけでなく落下などの危険があるため、早急な対応が必要です。

周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である空き家

  • 不審者が出入りしている
  • 野生動物が住み着いている
  • 伸びっぱなしの草や木が隣地にはみ出している
  • 土砂崩れが起こっている、もしくは起こる可能性がある

このような状態の空き家は、周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがあります。

なかでも周辺住民からの苦情が多いのは、隣地や道路にはみ出した草木です。たとえば庭の木が道路にはみ出ていると、折れた枝が落ちたり倒壊したりするおそれがあります。そのまま放置すると歩行者の通行を妨げてしまい、周辺住民とのトラブルに繋がりかねません。

空き家対策特別措置法から見る特定空き家と空き家の違い

特定空き家に指定される4つの要素について解説しましたが、それ以前に「空き家の定義って何?」と疑問に思うこともあるでしょう。

国交省では“1年以上住んでいない、または使われていない家”を空き家の定義としています。この“1年以上住んでいない(使用されていない)”状態を客観的に判断するために、国では以下の項目を判断材料としています。

  • 二次住宅用(別荘等)・賃貸用・売却用などのような「住宅」として使われていない
  • 人の出入りがない
  • 電気・ガス・水道などのライフラインが使用されていない
  • 住宅の登記記録や所有者の住民票の内容に不備がある
  • 住宅や土地が安全面・衛生面上において適切な水準であるための管理が行われていない
  • 住宅を使用していることについての所有者からの主張がない、または虚偽の主張をしている

上記に当てはまる空き家は、“放置されていて危険な状態”または“周囲を不快にさせている状態”であると判断され、空家等対策特別措置法に基づき特別空き家に指定されるおそれがあるでしょう。

空き家が通報されて指定空き家に指定されるまでの流れ

空家等対策特別措置法によって自治体から特別空き家に指定されると、所有者に対し以下の流れで指導や勧告を行います。

  • 助言や指導
  • 勧告
  • 命令
  • 行政代執行

助言や指導の段階で指定された要因を取り除けば、特定空き家の指定を解除することが可能です。しかし、勧告を無視すると「住宅用地の特例措置」が適用されなくなるため、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍にも増えます。

さらに命令を無視すれば、税負担が増えるだけではなく最大50万円以下の過料が課せられる場合があります。それでも無視し続けると行政代執行として強制撤去が行われ、高額な解体費用を所有者に請求することになるので要注意です。

ではここで、空き家の通報により特定空き家に指定されるまでの流れを具体的に解説します。

空き家の調査が入る

行政への通報などをきっかけに、空家等対策計画に基づいて空き家の調査が行われます。

情報収集はもちろん、立ち入り調査などにより実態を把握します。

特定空き家に認定される

調査により対象の空き家が“放置されていて危険な状態”か、または“周囲を不快にさせている状態”かを判断されれば、特定空き家に認定されます。

空き家へ助言・指導がされる

空き家の所有者に対し、適切に管理するよう助言や指導が行われます。

内容は、特定空き家に指定される要因となった不適切な状態に対する改善・解消です。

たとえば、破損や倒壊リスクがある空き家なら修繕や解体を勧めるなどの助言・指導を行います。

行政からの助言・指導に応じれば、特定空き家の指定が解除されます。

空き家に勧告がされる

行政からの助言・指導に応じない場合は、より強力な措置となる勧告がなされます。

特定空き家が勧告を受けた場合、翌年から「住宅用地の特例措置」が適用されなくなり、固定資産税や都市計画税の負担が大きくなります。

空き家是正の命令がされる

行政からの勧告に応じない場合は、さらに強力な措置となる命令が下されます。命令に従わなければ違反となり、50万円以下の過料が科せられます。

行政代執行が実施される

行政からの命令に従わない場合は、所有者に代わって行政が対処する行政代執行に移ります。具体的には、空き家の強制撤去や一部の撤去、廃棄物の処分や庭木の伐採です。

特定空き家の状態によって処分内容は異なりますが、行政代執行の費用は空き家の所有者に請求されます。支払いに応じない場合は、自治体による財産差し押さえなどで強制的に徴収されるので、空き家だけではなくほかの財産も失いかねません。

特定空き家に指定されても、助言・指導の段階であれば指定を解除することが可能です。取り返しがつかなくなる前に、特定空き家に指定された場合は早急に対応しましょう。

特定空き家に認定されない方法

誰も住んでいなくても、空き家を適切に管理すれば特定空き家に認定されることはありません。定期的に掃除や修繕を行うと良いでしょう。

また空き家を所有するだけでも税金や維持管理費がかかるため、賃貸や民泊などに活用して不動産運用してみるのもおすすめです。また、それでも今後空き家を使用する予定がないのなら、売却することで特定空き家に認定されるリスクがなくなります。

このほか、空き家を取り壊して更地にすることで特定空き家に認定されるリスクを避けることができますが、この場合は「住宅用地の特例」がなくなるため固定資産税が高くなります。

固定資産税が高くなるのを抑えたいなら、定期的な清掃や修繕を。また税負担や維持管理費の出費を軽減するなら不動産運用に回すのがおすすめです。

空き家を通報されないためのQ&A

最後に、空き家の通報に関するよくある質問についてご紹介します。

空き家の苦情はどこに言えばいい?

空き家に対する苦情や相談は、空き家が所在する市町村の市民課や地域課などが対応しています。

また、空き家問題が法的なトラブルに発展しそうな場合は弁護士に相談することもおすすめです。もしも管理不全が原因で空き家の壁が崩れてしまい怪我を負うことになれば、所有者に対して損害賠償請求ができます。

どちらにしても、所有者に直接コンタクトをとるよりも自治体の担当課や弁護士を挟むのがベターです。

空家が倒壊したら誰が責任を負う?

空き家が倒壊して被害が発生した場合、空き家の所有者が損害賠償責任を負う必要があります。

損害賠償額は数千万円から数億円にも及ぶ可能性があるため、所有者(占有者)は責任を持って空き家を管理しなくてはなりません。

空き家が通報されないためにも管理が必要

空き家を通報されると、特定空き家に指定される可能性が高くなります。行政からの指導や勧告に応じない場合、固定資産税などの負担額が増えたり50万円以下の過料が課せられたりするため、特定空き家の指定は所有者にとって大きなデメリットです。もしも特定空き家に指定されても、指導・助言の段階で改善すれば特定空き家の指定は解除されます。

空き家を通報されないためには、適切な管理が必要です。住む予定がなくても掃除や修繕、庭の手入れなどを定期的に行い、特定空き家に指定されないよう注意しましょう。

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