住まない実家を相続してはいけないのはなぜ?相続放棄の注意点や売却・活用方法について解説

「将来的に実家を相続するけど、住まない場合の税金は高くなる?」

「住まない実家は相続してはいけない、そう言われている理由とは?」

など、相続した実家に住まない場合のデメリットを気にしている人も多いのではないでしょうか。

実際、相続した実家に住まなければ予期せぬリスクや重い経済的負担が伴う可能性もあります。税負担や近隣トラブルなどを考慮しても、相続した実家に住む予定がなければ

  • 相続放棄
  • 不動産売却
  • 空き家管理

などの選択肢を検討すべきです。本記事では住まない実家を相続する際の注意点や対処法、相続放棄の正しい手続きなどについてくわしく解説します。

住まない実家を相続してはいけない理由とは?

住まない実家を相続する際、以下の予期せぬリスクやコストが伴います。

  • 相続税の負担
  • 固定資産税の負担
  • 維持管理費用負担
  • 行政による強制退去等の措置
  • 近隣トラブル など

実家の市場価値が高いと税額も大きくなる可能性があり、金銭的な負担が重くなります。また親から相続されたが実家に住まない、なんてことはよくありますが固定資産税も毎年発生し経年劣化に伴う維持管理費用を負担しなければなりません。さらに空き家状態が続いて行政から「特定空家等の指定」を受けると、最悪の場合勝手に解体される他に解体費用を請求され多額のお金がかかります。

また不法投棄や景観を損なうなどで近隣トラブルも問題になっており自分に悪気がなくても訴訟に発展し困ったことになってしまうこともあります。

親からの相続だからと簡単に考えて住まない実家を相続する前に、これらのリスクやコストを慎重に考慮することが重要です。

難しい話にはなりますがここからは空き家に住まない場合に発生するリスクやコストについてくわしく解説します。

相続税が高くなる

実際に住んでいない物件は、自宅としての「居住用財産の特例」が適用されず相続税が高くなります。特に相続した実家が都心や人気の居住地区に位置している場合、土地の評価額が高くなりがちです。空き家であっても通常の住宅と同じように、家屋と家屋が建っている土地それぞれの評価額が算出されます。相続した空き家や土地の評価額が満額で課税されることになれば、相続税も相対的に高くなるのです。

相続した実家に住まないけど節税はしたい、そのような場合は賃貸などに出せば居住用財産の特例が適用され、相続税評価額が減額されます。

固定資産税や維持・管理の費用がかかる

不動産を所有するだけで納税義務が発生する固定資産税は、不動産価値の高い実家ほど税額も上昇します。さらに空き家の場合は定期的な清掃や設備の点検、防犯対策などの維持費・管理費も必要です。

経済的な負担を負っても、空き家である以上長期にわたって資産価値が減少する可能性があり、相続による「恩恵」が負の遺産となりかねません。

将来にわたって相続した実家に住まない場合は、相続放棄や自治体の空き家バンクへの登録、寄付などの選択肢も検討しましょう。

「特定空家等」に指定される可能性がある

空き家により建築物が倒壊する恐れがあると、空き家対策特別措置法による「特定空家等」に指定され、行政から強制撤去などの措置を受ける可能性が高まります。強制撤去になった場合の費用も、行政ではなく所有者が負担しなければなりません。

相続した不動産は適切に管理するか、売却・活用することが重要です。

近隣トラブルに発展するリスクがある

実家を相続し放置すると次のようなリスクがあります。

  • 草木の繁茂や建物の老朽化が近隣の景観を害する
  • 不法投棄の場所として使用されるリスク

このような状況は近隣住民との関係悪化を招き、トラブルに発展するケースが少なくありません。

空き家状態の実家を所有し続けたい場合は、適切な管理や活用法を考えることが重要です。

住まない実家を相続した場合の対処法

住まない実家を相続した際に考えられる対処法として挙げられるのは下記のとおりです。

  • 国へ返還する
  • 自治体の空き家バンクに登録する
  • 自治体や個人、法人へ寄付する
  • 土地活用して資金を得る
  • 買取業者へ相談する

とはいえ国に返還するための手続きは条件が厳しく、現実的ではない場合が多いです。より現実的な選択肢としては、自治体の空き家バンクへの登録が挙げられます。登録により貸出しや売却の仲介を自治体が代行してくれるため、新たな所有者を探す手間を省くことができます。

また物件の寄付は、社会貢献だけではなく税制面でのメリットが得られることもポイントです。賃貸住宅や商業施設の建設、農地としての活用などの土地活用なら、空き家の状態を改善しながら収益を得ることができます。迅速な取引を望む場合は買取業者に相談するのも一つの方法です。

自身の状況に合った最適な決断を下すためにも、住まない空き家を相続した場合は専門家に相談しながら話を進めるとよいでしょう。

ここからは住まない実家の対処法について、それぞれのポイントやメリット・デメリットをご紹介します。

国へ返還する

住まない空き家を解体して更地にし、以下の要件を満たせば、土地を手放して国に返還する「相続土地国庫貴族制度」を利用することができます。

  • 更地(地上・地中)
  • 境界が明らかで隣地と揉めていない土地
  • 抵当権のない土地
  • 道路や境内、用水路などではない土地
  • 危険な崖やクマやスズメバチが出たりしない土地
  • 土地改良区の土地以外
  • 樹木はケースバイケース

手続きは地方自治体によって異なる場合があるため、最寄りの役所に確認が必要です。また申請には以下の費用がかかるので注意しましょう。

  • 審査手数料|土地一筆あたり14,000円
  • 申請代行費用|任意で専門家に依頼する場合(不動産会社は不可)
  • 測量・境内確定費用|土地家屋調査士の場合は20〜50万円ほど
  • 片付け・解体・伐採にかかる費用|解体業者や林業会社へ依頼

国に返還することで固定資産税の負担や荒廃を防ぐメリットがありますが、一度返還した不動産は戻ってこないため、家族の合意形成が必要です。継承する意志がなく、他の活用方法も見つからない場合に適しています。

自治体の空き家バンクへ登録する

自治体の空き家バンクにはさまざまなメリットがあります。

  • 無料で登録できて仲介手数料も発生しない
  • 家財道具の処分や解体撤去に対して補助金が受け取れる
  • 場合により賃貸収入を得ることができる

そもそも自治体の空き家バンクは、使用されていない住宅を登録し、賃貸または販売を希望する人に情報を提供する公共のサービスです。それにもかかわらず物件情報の掲載費用や仲介手数料が発生せず、補助金制度が利用できる点においては不動産会社にはない特徴と言えます。

一方で空き家バンクは認知度が低く、不動産会社がサポートしてくれるような内覧や契約条件の交渉は、所有者自身で行わなくてはならないデメリットもあります。は、

空き家バンクの登録には、物件の所在地や状態を示す書類が必要であり、自治体によって異なる条件を満たすことがポイントです。くわしくは所在地の自治体へ確認することをおすすめします。

自治体・個人・法人へ寄付

空き家となった実家を自治体やNPOなどの公益性を有する団体、または社会貢献に積極的な企業へ寄付することで、税制上の優遇措置を受けられる可能性があります。また社会貢献としての満足感を得られるのもメリットです。

一方で自治体は自治体自体が必要としている場合に限り空き家の寄付を受け付けますが、利用目的のない空き家の寄付を受け付けない場合もあります。自治体によって対応が異なるので、所在地の自治体に確認することをおすすめします。

手続きは寄付を希望する団体との協議の上、必要書類の提出とともに進めましょう。

土地活用する

使用していない家や土地は、賃貸経営に転換することで安定した収益を得られる可能性があります。また太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギーを売電するのも土地活用の選択肢です。

土地活用の際には市場ニーズを理解し、適切な管理や保険の加入、税金の知識などが必要です。また地域の法令や建築規制にも注意しながら計画を立てる必要があるため、専門家や業者に相談することをおすすめします。長期的な視点と戦略を立てて、人に貸して家賃収入を得る、太陽光発電などの土地活用を検討しましょう。

買取業者へ相談する

「特定空家等」に指定されるリスクを避けるためにも買取業者への相談し、相続した不動産を資金化するのも選択肢の一つです。買取業者に依頼することで実家の状態や市場価値を専門的に評価し、不要な手間やコストをかけずに相続した実家を売却することができます。

査定は無料で行ってくれる会社が多いので複数の買取業者に相談して見ましょう。また何社も連絡が来てしつこいという方は空き家売り買いドットコムにて相談に乗ることも可能です。

買取業者へ相談する際は査定から売却までのプロセスや、必要な書類、費用の概要を事前に確認することが大切です。相続や実家の管理に関する不安を解消して最適な方法を見つけるためにも、細かな疑問点をきちんと解決しておくことが重要です。

住まない実家を相続放棄する際の注意点

住まない実家を相続放棄する場合は以下の点に注意が必要です。

  • 遺産を承知した日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる
  • 司法書士や弁護士への相談
  • 全財産の把握とその後の税金や債務の責任を考慮

3ヶ月以内と聞けば余裕があるように感じられる場合もあるかもしれませんが、全財産の把握や債務状況の確認、相続人全員の承認、また「相続財産管理人」を選ぶための専門家への依頼など、時間のかかる作業が多いです。

もし手続きの期限に間に合わなかったらどんなデメリットがあるのか?そして「相続財産管理人」は、なぜ・どんな目的で選ばなくてはならないのか、その内容についてくわしく解説します。

相続放棄の際は3ヶ月以内に手続きを

相続放棄の手続きに間に合わないと、被相続人の負債を含むすべての財産を相続人が自動的に承継することになり、後に大きな経済的リスクを背負うことになる可能性があります。相続人にとってプラスなものばかりではなく、借金や空き家などマイナスな相続もあるからです。実家を相続する・しないにかかわらず元所有者の全財産を把握する期間も必要なので、不要な負担を避けるためにも手続きの期限を守り、相続放棄の決定を迅速に行いましょう。

「相続財産管理人」を選ぶ必要がある

財産の管理が困難な場合は、相続財産管理人(相続財産清算人)を専任することが法律で認められています。相続財産管理人は、相続財産の保全や債務の清算などを適切に行う役割を持ち、放棄手続きに際して正確な財産の把握を助ける重要なキーパーソンです。

相続財産管理人は家庭裁判所から選任してもらう必要があります。その際には「利害関係人」もしくは「検察官」が相続財産清算人選任審判の申し立てを行わなくてはならないため、専門家へ相談するのがスムーズと言えるでしょう。

被相続人の関係者なら誰でも相続財産管理人になれる、というわけではないのでくれぐれもお気をつけください。

まとめ

住まない実家を相続すると固定資産税や相続税が高くついたり、維持管理の手間や費用を負担しなければならないデメリットがあります。このほかにも行政指導で強制退去を命じられたり、近隣トラブルに発展したりとさまざまなリスクが伴うのも知っておかなくてはなりません。もしも相続した実家に住む予定がなければ、相続放棄や空き家バンクの登録などを検討してみてはいかがでしょうか。

相続放棄を検討する際には、期限内に家庭裁判所へ必要書類を提出しなくてはなりません。また空き家バンクへ登録することで資金化できる可能性もありますが、各自治体によって手続きの仕方や取り扱いが異なるため、所在地の自治体に確認してみることをおすすめします。状況に応じた最適な対処法について理解を深め、後悔のない選択をしましょう。

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