空家対策特別措置法改正の概要と固定資産税の増額を回避する方法を解説

空家等対策の推進に関する特別措置法が2023年12月13日に改正されました。この改正によって、固定資産税が増額される場合があることをご存じでしょうか。

空き家の固定資産税が増額される可能性があることは理解していても、実際にどのような改正が行われ、どのような住宅が空き家となるのか、改正の背景や概要を把握している方は少ないようです。

そこでこの記事では、2023年12月13日に改正された空家対策特別措置法の概要や知っておくべきポイント、さらに空き家にかけられる固定資産税の増額を回避する方法についてもご紹介します。

空き家を所有している個人や法人の方で空き家法の改正内容を把握しきれていない方は、ぜひ参考にしてください。

2023年12月に行われた空き家法改正について

今回の空き家法改正のポイントは以下の通りです。

  • 新区分「管理不全空家」の設置
  • 空き家の活用促進対策を強化

この改正により、空き家の管理が不十分な場合、固定資産税が増額する可能性が高まります

空き家法の改正が行われたのには理由があります。従来の空き家法は、所有者の分からない倒壊などの危険性のある空き家を、特定空家とする施策でした。特定空家は行政が指導や代執行による撤去等ができる他、住宅に適用される固定資産税の優遇がなくなります。しかし空き家問題は解消するどころか深刻化したため、空き家の適切な管理や活用が行われやすいよう、法改正が行われました。

この改正について理解を深められるように詳しい背景について解説していきます。

空き家法改正の背景

空き家法改正の大きな理由は空き家の増加です。国土交通省によると、日本の空き家はここ30年で約9.8%から約13.8%に増加し、特に賃貸用や売却用ではない空き家の増加率が目立ち国として問題視されています。
空き家は景観の悪化、治安の悪化、土地の有効利用の阻害、倒壊による危険、衛生環境の悪化といった多くの問題を引き起こします。2023年12月に行われた空き家法改正の目的は、所有者に私有財産である空き家の適切な維持管理や活用を促すことによる、空き家が引き起こす問題の解消です。

空き家法改正の概要や変更点、知っておくべきポイントは?

2023年12月に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法の改正は、空き家問題の解決をより効果的に行うために実施されました。空き家を所有されている方は、この法改正の主要な変更点を理解するとともに、固定資産税の増額を回避する方法を知ることが重要です。法改正の概要と知っておくべきポイントを解説します。

まず改正の中心は、特定空家の前段階である管理不全空家の設定です。以前の規定よりも早い段階で問題のある空き家だと指定できるようになりました。特定空家や管理不全空家に指定され、勧告や指導等を行っても管理状況に改善が見られなければ固定資産税が増額されます。空き家の所有者にとっては大きな負担増となるため、空き家の適切な管理や活用が必要です。

固定資産税の増額を回避するための対策は、第一に定期的なメンテナンスを行い、建物が荒廃しないようにすることです。空き家を賃貸にしたり、売却を検討したりすることも有効です。行政が実施する空き家対策事業を調査し、補助金の活用や、相談窓口の利用も有効な対策となります。

改正内容の詳細を、空き家等の活用拡大、管理の実施、特定空家等の除却に分けて解説します。空き家を所有されている方は、これらの改正内容を把握し、空き家の管理方法の見直しを行うことが重要です。

空き家等の活用拡大

空き家の有効活用には、リノベーションやリフォームを用いた賃貸への転用や住居としての活用があり、補助金などで有効活用を推進する自治体もあります。空き家を所有する方は自治体などでの制度等をよくチェックしてみましょう。負の資産であったものを国や自治体から補助を受けてお金を産む資産に生まれ変わらせることが可能かもしれません。固定資産税増額を回避しつつ空き家の活用ができそうであれば一度検討する価値があるかと思いますので調査、検討を進めてみてはいかがでしょうか?

管理の実施

空き家法改正により、空き家を所有する方にはより厳格な管理義務が課せられています。例えば建物の外観の維持や周囲の環境への配慮が必要です。管理を適切に行えば、固定資産税の増額を回避できますし、空き家を有効活用できる機会の増加が期待できます。改正法では各市町村や都道府県に、空き家対策の計画立案や実施に努めるよう求めており、行政と所有者が協力して空き家の管理に努めることが理想です。

特定空家等の除却

空家等対策の推進に関する特別措置法により、特に危険性が高く、周囲の生活環境に悪影響を与える特定空家には、自治体によって除却命令が出されることがあります。除却とは、家屋を撤去し更地にすることで、除却後の土地は、住宅、商業施設、公共の空間などへの利用が可能です。改正法では、このような特定空家の除却やその後の活用を促進するための制度が充実しています。制度を活用することで、適切なアドバイスを受けることができ、固定資産税の増額を回避すると同時に土地の有効活用が可能となります。空き家所有者は自治体との連携を図りながら、特定空家の解消に努力することが必要です。

空き家の固定資産税が6倍になる流れ

空き家の増加問題の対策として空家対策特別措置法が改正されましたが、この改正により特定空家に加えて管理不全空家の設定が行われ、固定資産税が最大で6倍になる恐れのある空き家が増加しました。新たに今後特定空家になる可能性が高いと考えられる家屋を管理不全空家に指定できるようになり、状況の改善が見られなければ特定家屋と同様に固定資産税増額の対象です。

なぜ固定資産税が6倍になるかを簡単に解説します。200㎡以下の住宅用地では特例として本来の固定資産税額の1/6まで税額が軽減されています。しかし空き家が特定空家や管理不全空家に指定され、行政の助言や指導に従わなかった場合には、特定空家は税の特例が受けられないため、税額が最大6倍に増加するのです。その場合、特定空家や管理不全空家に指定された翌年度の固定資産税額から増額されます。

固定資産税の増額は、個人にとっては大きな出費です。これを回避するためには、所有する空き家を特定空家や管理不全空家に指定されないよう注意する必要があります。固定資産税が増額となる条件や固定資産税が増額となるタイミングについて解説します。

また下記の記事でも詳細を記載しておりますのでぜひ確認してみてください。

空き家の固定資産税が6倍!?いつから始まるのかと増額を避けるための対策まで解説

空き家法改正で固定資産税が6倍になる条件とは?

空き家法改正により、固定資産税が最大6倍に増額される勧告が行われる条件は、対象となる空き家が所在する自治体による助言や指導に所有者や管理者が従わず、危険な空き家の状態が継続している場合です。具体的には、自治体からの改善命令に応じずに危険な状態が続いている場合や、景観の悪化を放置している場合に適用されます。所有者は命令を受けてから一定期間内に対応が必要となり、期限を過ぎると税金の増額が発生します。

固定資産税が6倍になるタイミングはいつ?

空き家の危険な状態が継続している場合に固定資産税が増額されると言っても、具体的に固定資産税の増額が実施されるタイミングはいつ頃でしょうか。地方自治体が空き家が危険な状態にあると認定し、その空き家を特定空家に指定すると、まず所有者に対して是正措置を求めます。指定を行った年度中は是正措置の実施を待つため、実際に増税が適用されるのは指定を受けた翌年度からとなり、空き家の所有者に増額された固定資産税の通知が届きます。意外と猶予期間が短いため、増税回避のためには自治体の指定前に適切なメンテナンスの実施や有効活用を行う方が安心です。

「特定空家」「管理不全空家」となって固定資産税が6倍になるのを回避する方法

固定資産税が6倍となるのを回避するためには、所有している空き家が特定空家や管理不全空家に指定されないよう対策を行うことが必要です。そもそも指定されなければ、住宅として固定資産税の軽減措置を受け続けられ、増額はありません。

空き家が特定空家に指定される基準として、建物の老朽化、周囲に対する危険、不衛生等が挙げられます。指定を避けるためには、定期的なメンテナンスを行い、建物を適切に管理する必要があります。地方自治体との協力体制を築き、自治体が提供する空き家対策支援サービスを利用することも有効です。費用はかかりますが、必要に応じてリノベーションや解体を検討することも考えられます。

複数の空き家対策が考えられますが、以下の3つの方法が代表的です。

空き家のまま売却・貸出

空き家を売却することは、特定空家や管理不全空家の指定を避ける有効な選択肢です。売却すれば所有権は買主に移りますので、空き家の管理も買主の責任となります。空き家の価値が老朽化などによりほとんど見込めないとしても土地の価格は変わりません。空き家となって間もない場合は、そのままの家に居住したいと考える買主もいますし、整えて賃貸住宅にするのも良いでしょう。

解体して更地として売却・貸出

空き家を残したまま売却するのではなく、解体して更地として売却・貸出する選択肢も一般的です。更地化することで不動産としての魅力が高まり、市場価値が上がる可能性もあります。立地によっては貸地にしたり駐車場などとして収益を得ることも可能です。解体作業にはコストがかかりますが、長期的な固定資産税の増額を防ぐ観点からは、賢明な投資といえます。なお解体に自治体の許可が必要な場合があるので、事前に確認することが重要です。

行政の指示内容に沿って改善

空き家は急速に劣化するため、空き家対策が必要だと理解していても、対処が遅れて特定空家や管理不全空家に指定されてしまうことがあります。その場合には行政からの指示や指導があるので、その内容に沿って対応することで指定が解除され、固定資産税の増額を回避することが可能です。具体的な指示内容としては、建物やその周辺の清掃、草木の適切な管理、不法投棄防止策の実施などがあります。指定される前に適切な管理を行うことが理想ですが、たとえ指定を受けてしまったとしても対応策を講じる猶予がありますので、所有者は指定の解除に向け、自治体に従ってあきらめずに適時対策を講じましょう。

まとめ

空家対策特別措置法の改正により、所有の空き家を適切に管理せず放置すると固定資産税が増額される可能性が高まりました。空き家の適切な管理や活用を行うことで、固定資産税の増額は回避可能です。空き家の適切な管理には、周辺環境の整備や草木や危険物の撤去、不法投棄の防止策、リフォームなどが挙げられます。また活用としては賃貸提供、売却なども有効です。簡単な対処で税金の無駄を回避することが可能なので、空き家を所有されている方には、法改正を機に大切な財産である空き家の管理や活用を見直すことをおすすめします。

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