土地や空き家を無償譲渡する方法は?税金に関してや注意点についても解説

「土地や空き家の無償譲渡はどんな方法で行うべき?」
「無償譲渡にかかる税金はいくらくらい?」
「個人間で無償譲渡するうえでの注意点が知りたい」

など土地や空き家の無償譲渡について、さまざまな疑問を持つ人も少なくないでしょう。

もしも今、所有する土地や空き家を家族や知人に無償で譲渡したいと考えているなら、そのプロセスにはいくつかの重要なステップと考慮すべき税法上の要件があります。今回の記事では、無償譲渡の手続きや税金、注意点について詳しく解説します。

土地や空き家を無償譲渡するのは可能?

土地や空き家の無償譲渡は法的に可能ですが、通常の不動産取引と同様、いくつかの手続きと納税が必要になります。特に注意したい点は、譲渡する側と受け取る側の双方で税金の申告が求められる点です。

一方地域活性化の一環として、自治体が空き家を活用するプログラムを提供している場合もあります。こうしたプログラムを利用することで相続税に対する対策や、地域貢献が期待できます。有益な資産活用につなげるためにも、無償譲渡を検討している人はメリットやデメリット、手続きの流れを把握しておきましょう。

土地や空き家を無償譲渡する方法

土地や空き家の無償譲渡を行う際、個人間で行うか、また不動産会社や空き家バンクを利用するかで流れや方法が異なります。

個人間の無償譲渡の場合は贈与契約書を作成し、公証役場で公正証書を作る必要があります。この手続きにより、法的な効力を持つ無償譲渡が可能です。また、相続税や贈与税の申告が必要となる場合があるため、税理士への相談やサポートを受けることをおすすめします。

一方不動産会社や空き家バンクを通じて無償譲渡する場合は、不動産のプロによる査定や法的手続きの支援を受けられるメリットがあります。

自身の状況に合わせて、最適な方法や手順を選ぶことが重要です。ここで個人間で無償譲渡する際のポイントと、不動産会社や空き家バンクを利用して無償譲渡するポイントについてくわしく解説します。

個人から個人へ譲る

個人間での無償譲渡は贈与契約の締結を伴います。贈与契約は、土地や空き家など不動産を無償で他人に移転することを約束する文書です。このプロセスにおいて、公正証書で契約を正式化し、贈与税の申告が必要になる場合があります。

さらに所有権移転のためには、登記手続きを行う必要があるため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。すべての条件を明確にして、贈与する側・される側の間でトラブルを避けることが法的な注意点と言えます。トラブルを起こさないためにも、無償譲渡の事前の相談や手続きについては、専門家のアドバイスやサポートを受けるようにしましょう。

不動産会社に譲る

所有している土地や空き家を不動産会社に無償譲渡することも選択肢の一つです。不動産会社に無償譲渡するには、まずは対象の不動産会社と連絡を取り譲渡の意向を伝える必要があります。

不動産会社への無償譲渡は、専門的な手続きを代行してもらえること、そして税金の面でのアドバイスも得られることがメリットと言えるでしょう。しかしこのプロセスには、贈与税の申告や必要書類の準備など、注意すべき手続きや条件が伴います。こちらの場合においても、無償譲渡を検討する際は専門家の助言を求めることが賢明です。

地方自治体が運営するような空き家バンクを利用する

地方自治体が提供する空き家バンクは、使われていない住宅や土地の活用を促進するための施策です。空き家バンクでは寄付を受けた物件を低コストで提供するため、移住を希望する人々にとって魅力的ですし、所有者にとっても不要となった不動産を無償譲渡できるメリットがあります。

手続きは地方自治体によって異なりますが、一般的にはオンライン登録や書類提出が必要となります。無償譲渡を検討する際には税金や法律上の責任も考慮する必要があるため、自治体の窓口で相談することが重要なポイントです。

どのような物件が無償譲渡になっているの?

無償譲渡になる物件のケースとして、特定の条件を満たした土地や空き家、老朽化が進み所有者にとって管理が困難な不動産などが挙げられます。このほかにも災害のリスクを減らす目的で、危険な立地にある物件を無償譲渡することもあります。

無償譲渡は、所有者から別の個人または団体へ費用を受け取らずに財産を移転することです。無償譲渡したい物件は、自治体による公募や特定の法人への提供が一般的な手法です。

ではここで、無償譲渡になりやすい物件の特徴をよりくわしくご紹介します。

全く利用されていない

長期間にわたり住居や商業施設などとして使用されていない、放置された物件も無償譲渡されやすい物件の一つです。例えば遺産相続により所有者が遠方に住むことになり、管理が困難になった家屋や、高齢化に伴い住む人がいなくなった古家などが該当します。新たな所有者へ無償譲渡することで、将来的な活用が期待されます。

活用しにくい

特定空き家のように活用しにくい物件も、無償譲渡を考える際に重要な要素です。多くの場合、立地の不便さ、老朽化、あるいはリフォームが困難であるといった理由で使用されていません。また特定空き家のように扱いづらい物件は市場価値が低く、売却を試みても買い手が見つからないことが多いです。

無償譲渡の際にかかる税金について、譲渡者に対する税負担を軽減できる可能性もありますが、同時に受け取る側にも将来的な負担や責任が生じることを念頭に置く必要があります。

老朽化が進行している

建物の経年劣化や維持管理の不備により老朽化が進行している物件も、無償譲渡の選択肢に含まれやすいです。今や空き家の問題は社会問題となっていますが、老朽化の進行で安全性が低下した状態のまま建物を放置すると、景観の悪化や近隣住民へのリスクを高める可能性があります。

無償譲渡は新たな所有者による再活用を促進し、地域の活性化や空き家問題の解消に繋がるため、自治体や地域住民からも支援される傾向にあります。老朽化した空き家を対象とした無償譲渡は、単に負担を減らすだけでなく、社会的価値の創出にも寄与するのです。

「特定空家等」に指定される可能性がある

建物の老朽化が激しく、周囲に危険を及ぼす可能性があるなどの一定の基準に該当する空き家は、自治体によって特定空家等に指定され、所有者に対して是正措置を求められることがあります。この行政指導に従わない場合は、強制執行で取り壊されたり、最悪の場合罰金が課せられたりとさまざまなデメリットがあるため、所有者としても無償譲渡を希望する場合があるのです。

もし、自身の所有する空き家が老朽化して周囲に迷惑をかけていると懸念される場合、無償譲渡を通じて新たな所有者に活用してもらうことが、1つの解決策になり得ます。

無償譲渡の際にかかる税金

土地や空き家の無償譲渡には、その名の通り費用が一切かからないように思われがちですが、実際には複数の税金がかかることがあります。関連する税金には贈与税、登録免許税、不動産取得税、譲渡所得税が挙げられます。譲渡に際して金銭の授受がない場合であっても、不動産の市場価値に基づいてこれらの税金が課される可能性があるので注意しましょう。

ではここで、贈与税・登録免許税・不動産取得税・譲渡所属税それぞれのポイントについてくわしく解説します。

贈与税

贈与税は個人から個人へ無償譲渡する際に発生する税金です。この場合売主(贈与者)には税金が発生しませんが、買主(受贈者)に贈与税が課せられます。税額は相続税評価額をもとに計算されるため、不動産を受け取る側が自ら申告し納付しなくてはなりません。

ただし親族間の贈与であれば、一定額までは非課税措置が施されるのがポイントです。

不動産登記のための登録免許税

不動産登記のための登録免許税は、土地や建物などの不動産の名義変更を行う際に必要な税金であり、不動産の価値に応じて計算されるのが特徴です。そして無償譲渡においても、不動産の固定資産税評価額を基に税金が算出されます。

一方贈与税と同様、親族間の移転や相続など特定の条件下では、税率が減額される特例が適用されることがあります。

登録免許税の税額は、固定資産税評価額に対して設定された税率を乗じることで求めることができます。無償譲渡を考えている方は、税金の計算方法とそれに伴う特例を理解し、予期せぬコストに備えておくことが大切です。

不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得した際に地方税として課税されるものです。無償譲渡の場合は、市場価値に相当する額が課税額となることが一般的です。

しかし例外として、親族間の無償譲渡では特定の条件下で税金が軽減されたり免除されることがあります。また適用条件には贈与税の特例が適用されるか、そして譲渡先の親族の範囲などが含まれます。不動産取得税の計算方法は自治体によって異なることがあるため、事前に確認することが重要です。

無償譲渡を行う際には、これらの税金の計算方法や適用条件、免除規定について正確な知識を持つことが注意点の一つと言えるでしょう。

譲渡所得税

譲渡所得税は、資産を譲り渡した際に発生する利益に対して課される税金であり、無償譲渡においても市場価値を基にした「仮想の譲渡所得」を計算し、それに基づいて税金が算出される仕組みになっています。

ただしこちらも特例として、一定の親族間の贈与や相続に際しては、譲渡所得税が非課税となる場合があります。無償譲渡を行う際は、これらの税法上のルールを理解し適切な手続きを行うことが重要です。

また譲渡所得税は譲渡する側(売主)が課税対象となりますが、無償譲渡の場合は一般的な譲渡所得は発生しないため、計算方法が異なる場合があります。

例えばAさんが自分の土地をBさんに無償譲渡した場合、Bさんは不動産登記を行い、取得税を納付する可能性があります。節税対策としては、非課税枠を最大限に活用する、適切な時期に譲渡するなどがポイントです。

土地や空き家を贈与する際の注意点

土地や空き家を無償譲渡する際には、書面で贈与契約書を作成するなどさまざまな手続きやステップが必要です。

贈与契約書には譲渡する土地や建物の詳細、両当事者の情報、そして贈与が無償であることを明確に記載する必要があります。仮に無償でも高額な贈与とみなされた場合、贈与税の申告が必要になることもあるので注意しなくてはなりません。税務上の見落としを防ぐためにも、税理士に相談することをおすすめします。

また無償譲渡後に土地や空き家の隠れた瑕疵(かし)が発覚した場合、贈与者には不適合責任が生じる可能性があります。後に発生するトラブルを防ぐためにも、事前に物件の状態について正確に伝え、適宜専門家による査定を受けることが重要です。

無償譲渡する相手といくら親しい間柄でも、無償譲渡のリスクと責任を理解したうえで、適切な法的手続きを経て進めるべきでしょう。ここで土地や空き家を譲渡する際に特に注意したいポイントを2つご紹介します。

必ず書面で贈与契約を

贈与契約を書面で交わすことで、将来的に起こり得るトラブルを避ける証拠になる場合があります。

書面に記載する内容には、具体的に次のようなものがあります。

  • 物件の所在地
  • 面積
  • 境界といった土地や建物の詳細
  • 契約当事者の氏名や住所
  • 贈与の条件等
  • 契約の主要事項など

これらを明確に記したうえで、物件に隠れた瑕疵があった場合の「不適合責任」に関する取り決めも盛り込むとよいでしょう。

贈与契約書は法的手続きの重要性を示しています。明確に記入しない、また作成自体を怠るなどはさまざまなリスクに繋がることになるため注意しましょう。

契約不適合責任を負うことも

契約不適合責任は、譲渡された不動産が契約時に想定されていた状態と異なる場合に、譲渡者が責任を問われるリスクを指します。

例えば、

  • 贈与された土地に未知の権利上の問題が発覚した場合
  • 空き家に隠れた瑕疵があったとき

などに契約不適合責任が生じる可能性があります。贈与契約を結ぶ際には不動産の現状を正確に伝え、契約書にその旨をしっかりと記載することが重要です。複雑な手続きで不備を出さないためにも、あらかじめ専門家による調査を検討するべきでしょう。

Q&A

無償とは言え無償譲渡には税金がかかるケースもあるほか、譲渡したあとに瑕疵が見つかって思わぬトラブルに発展するケースもあり、不安を覚える人も少なくないのではないでしょうか。最後は無償譲渡にまつわるよくある質問についてまとめました。

無償譲渡とはどういう意味ですか?

無償譲渡とは財産を金銭やその他の対価を受け取ることなく、他人に譲り渡すことです。不動産の分野においては、土地や空き家などが無償譲渡されるケースがあります。

ただし無償譲渡を受けた側には贈与税が発生する可能性があります。親族へ譲渡するなどの一部条件により税負担が軽減される措置もあるため、税務上の影響をきちんと確認・理解することが大切です。

親族間の相続対策や地域活性化のための空き家対策など、さまざまなケースで不動産の無償譲渡が行われることを知っておきましょう。

家を無償で譲渡したら税金はどうなるの?

家を無償譲渡する場合、不動産登記に伴う登録免許税は有償無償にかかわらず必要となります。また不動産取得税は譲渡を受ける側が負担する税金で、無償譲渡では一定の条件下で免除されることがあるのがポイントです。

また無償譲渡も贈与税の課税対象です。売主(贈与者)には市場価値に相当する金額を贈与したものとみなされ、税金が課されます。特に親族間での無償譲渡は贈与税の適用を受けやすいため、税理士など専門家に相談やアドバイスを求めることをおすすめします。

無償譲渡の課税額はいくらですか?

無償譲渡の課税額について、具体的にどれくらいの金額になるのかシミュレーションしてみましょう。

例えば親が子に土地を譲渡する場合、子は贈与税の対象となりますが、110万円の基礎控除が適用されます。つまり110万円を超える部分に対して、贈与税が課税されることになります。贈与税の税率は10%から55%までとなっており、譲渡する土地の価値や譲渡先の親族関係に応じて異なるのがポイントです。

ここで試算してみましょう。

土地の時価が300万円であった場合、まず基礎控除の110万円を差し引き、残る190万円に対して贈与税が適用されます。もしも親子間での無償譲渡で税率が30%であった場合は、190万円の30%、つまり57万円が贈与税として計算されます。

無償譲渡に際しては、税金の計算方法を理解し適切な申告を行うことが大切です。また特例や控除の適用条件を把握し、想定外の税金がかからないよう注意する必要もあります。

法人から個人へ土地が無償譲渡されるとどうなる?

法人から個人へ土地を無償譲渡された場合、法人側には法人税、個人には所得税がかかります。

法人に対する法人税がかかるケースには、時価で譲渡することで売却益が発生する状態が挙げられます。これはみなし時価が帳簿上の簿価よりも高いという意味ですが、みなし時価が帳簿上の簿価より低ければ売却損になるため、法人税はかかりません。

一方で受け取る側(個人)も贈与税の納付対象になる可能性があるため、土地を受け取る側と譲渡する法人双方が税務申告を適切に行う必要があります。法人の無償譲渡は単純な処理ではなく、税務上の処理を正確に理解し適切に行うことが重要です。

まとめ

利用していない土地や空き家、また活用しにくい不動産などの無償譲渡は珍しくありませんが、手続きには特定の手順を踏む必要があります。また無償とはいえ税金がかかる可能性も高いため、たとえ個人間の譲渡であっても税理士や弁護士などの専門家を挟んで手続きすることが安全です。不動産の無償譲渡には贈与税や登録免許税、不動産取得税、譲渡所得税などさまざまな項目の税金が絡むので、誰に対して、またどのような状況で無償譲渡のやりとりをするのかそれぞれのケースに合わせて対処しましょう。また契約書面を交わし、後に起こり得るトラブルを未然に防ぐことも大切です。税務上の注意点を理解したうえで、無償譲渡を検討しましょう。

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